IMA ONLINEの新コンテンツとして、4店舗の写真集の目利きが毎月おすすめ写真集を紹介するコンテンツが先月からスタート。東京には、個性的なセレクトが光るブックショップが数多く点在する。その中で、アートに力を入れる大型書店や個性的なアートブックやZINEを扱うインディペンデントブックショップなど、写真集を扱う4店舗の書店員が、毎月おすすめの写真集を3冊ずつピックアップ。
セレクト・文＝錦多希子（POST）
自然のダイナミズムをとらえた写真集
フランス出身で現在はロンドンを拠点とするフォトグラファーのクリステル・レバスは、著名な植物学者で生態学者のエドワード・ジェームス・ソールズベリーの遺したガラス板ネガと出逢った。1920年代にスコットランドの調査の一環で作成されたこの重要な史料をもとに、レバスは彼の歩みを再びたどることを決心した。本作はソールズベリーのネガやテキストに誘われるようにして、レバスが大判カメラを片手に長時間露光や薄暮時の撮影を駆使して捉えたパノラマ写真が織り交ぜられる。折りたたまれた観音開きをひらけば、そこには圧巻の景観が立ち現れる。100年の時を経て気象や生態系の変化を受けてもなおそこに在る、あるがままの自然が抱く力を存分に感じてほしい。
| タイトル | クリステル・レバス『Field Studies』 |
|---|---|
| 出版社 | Fw:Books |
| 価格 | 7,500円＋tax |
| 発行年 | 2017年 |
| 仕様 | ソフトカバー |
| URL |
スウェーデン出身のフォトグラファー、ゲリー・ヨハンソンは、スウェーデン局地研究事務局の助成を受けて2カ月にわたる南極大陸の現地調査に赴いた。「南極」と聞くと、つい漠然とした先行イメージに引っ張られがちだが、物怖じせず純粋な好奇心の高まりを原動力にしたヨハンソンが大判カメラのフィルターを通じてとらえた世界は、想像以上に猛々しく壮大だ。全身でその磁力を感じ取りながら過酷な自然と対峙するうちに、いつしか我が身も自然のなかに溶け込んでしまったらしい。確かに彼がとらえた情景であるにもかかわらず、不思議と個人的な視点や情感を知覚させない。まるで読者までもこの世界に放り込まれてしまったような錯覚さえ生まれる。
| タイトル | ゲリー・ヨハンソン『Antarktis』 |
|---|---|
| 出版社 | LIBRARYMAN |
| 価格 | 8,000円＋tax |
| 発行年 | 2015年（Second Edition） |
| 仕様 | ハードカバー |
| URL | http://www.libraryman.se/gerry-johansson-antarktis/ https://twelve-books.com/products/antarktis-by-gerry-johansson-second-edition（twelvebooks website） |
ドイツ南西部の巨大な森林地帯・シュヴァルヴァルトのあたりで生まれたマット・ヘネックは、エンターテインメントや音楽の世界から転向し、自然の景観を捉えるようになった。本作は、欧米にある数多くの森林に足を踏み入れて捉えた木々の真正なポートレイトの集大成だ。始まりも終わりもなく、際立ったランドマークもない森林の情景が、画面の外側へと限りなく広がっているのを感じる。光沢のある印画紙と対極的な触感のある紙を選定しているのは、「絵画と写真との境界線を取り除く」という本作における彼の意向の反映だろう。純粋な抽象表現へと昇華されたこの独創的な作品を通じて自然の本質を垣間見たとき、観る者はきっと大いに揺さぶられることから免れられない。
| タイトル | マット・ヘネック『WOODLANDS』 |
|---|---|
| 出版社 | Steidl |
| 価格 | 10,700円＋tax |
| 発行年 | 2017年 |
| 仕様 | ハードカバー |
| URL |
POST（limArt Co., ltd）
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