東京には、個性的なセレクトが光るブックショップが数多く点在する。その中で、アートに力を入れる大型書店や個性的なアートブックやZINEを扱うインディペンデントブックショップなど、写真集を扱う4店舗の書店員が、毎月おすすめの写真集を3冊ずつピックアップ。
セレクト・文＝錦多希子（POST）
2017年に待望の復刊を遂げた歴史的マスターピース3選
ティルマンスの写真集のなかでもひときわ支持が高く、絶版と再版を繰り返す希少性の高いシリーズといえば『コンコルド』。未来的な外観、超音速のスピード、耳をつんざくような轟き。1969年に初めて離陸して以来、人々の想像力を鷲掴みにしてきましたが、その後燃料価格の高騰や環境への意識の高まりとがあいまって、2003年に運行終了の一途をたどりました。勢いのある離着陸シーンや、空の中に辛うじて発見できるほど小さなシルエット…カジュアルでありながらもエレガントなようすで捉えられた一連の写真を通じて、当時はテクノロジーの進化の象徴であったこの伝説的な航空機に寄せられた憧憬の念が垣間見られるばかりか、コンコルド自体が美しさと環境破壊をともに孕んでいたことをよく物語っています。
| タイトル | ヴォルフガング・ティルマンス『Concorde』 |
|---|---|
| 出版社 | Buchhandlung Walther König |
| 価格 | 3,300円＋tax |
| 発行年 | 初版1997年／第5版2017年 |
| 仕様 | ソフトカバー |
| URL |
（※ドイツ語表記のみ） |
スイス出身の写真家、バルタサール・ブルクハルトが子どもたちのために作ったユニークなアーティストブックでは、彼が撮り続けてきた動物のポートレイト写真シリーズをもとに、ジャーナリストのマーカス・ヤコブはそれを「動物の美人コンテスト」に見立て、ユーモアあふれるテキストをしたためました。屋外に特設した撮影セットの情景から始まり、ページごとに1種の動物の横からの姿が現れます。厳選された20種というだけあって、どの動物も美しい佇まい。彼の回顧展の開催を機に、当初よりも小ぶりになって復刊された本書は、厚紙やリング製本といった絵本とも通じる装丁もあいまって、遊び心や親しみやすさを醸し出しています。好奇心旺盛な大人たちにも楽しんでもらいたい１冊です。
| タイトル | バルタサール・ブルクハルト,マーカス・ヤコブ『“Click”, said the camera』 |
|---|---|
| 出版社 | Lars Müller Publishers |
| 価格 | 3,400円＋tax |
| 発行年 | 初版1997年／第2版2017年 |
| 仕様 | リング製本 |
| URL | https://www.lars-mueller-publishers.com/%E2%80%9Cclick%E2%80%9D-said-camera |
アンディ・ウォーホルが1960年代にマンハッタンに構えた制作拠点「ファクトリー」。実験的な映像作品や代表的なシルクスクリーン作品が生まれた場である一方で、美術家のみならずミュージシャンや詩人、俳優やモデルといった当時のカルチャーシーンを牽引した人々が夜な夜な集っていたことも語り草になっています。そんな彼らに被写体となってもらい、じっとした状態を16ミリフィルムで撮り納めた映像フィルムの一部をプリントした写真と、彼の制作に携わっていたジェラード・マランガによる散文詩とで構成された共作として結実したのが本作です。当初は鳴かず飛ばずで敢えなく断裁処分をされてしまい、現存する初版はごくわずか。古書市場でも50万円ほどの高値がつけられています。初版から50年の節目にあたる今年、世界的にも初となる復刊を遂げました。
| タイトル | ジェラード・マランガ,アンディ・ウォーホル『Screen Tests／A Diary』 |
|---|---|
| 出版社 | POST |
| 価格 | 4,800円＋tax |
| 発行年 | 初版1967年/復刊2017年 |
| 仕様 | ソフトカバー（中綴じのテキストブック付属） |
| URL |
POST（limArt Co., ltd）
恵比寿にあるブックショップ。定期的に取り扱っている出版社が変わり、出版社の個性を感じる事の出来るセレクトになっている。また書店だけではなく、トークショーや展覧会なども開催、本の売り場のコーディネートや本のアーカイブ作成も手がけている。
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月曜定休
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