東京には、個性的なセレクトが光るブックショップが数多く点在する。その中で、アートに力を入れる大型書店や個性的なアートブックやZINEを扱うインディペンデントブックショップなど、写真集を扱う4店舗の書店員が、毎月おすすめの写真集を3冊ずつピックアップ。
セレクト・文=錦多希子(POST)
肖像写真ではないポートレイト写真集
コンセプチュアルアーティストのロニ・ホーンは、同じ属性にある特定の対象物を寄せ集めて類型的な見せ方をすることで、個々には多様性があることを暗に示していくようなアプローチが特徴です。もはや執念といっても過言ではないその真摯な姿勢とは裏腹に、作品として現れるイメージは資料写真のような印象を与える。そんな温度感のギャップもまた魅力です。本書では、これまでにホーン自身が受け取った様々なギフトから選りすぐりの逸品たちが登場します。本人の姿こそあらわれないけれども、彼女のことを想って選んだであろう品々が並ぶことで、贈り主からみたホーンの人物像が浮かび上がります。2018年3月4日(日)まで、南青山のRAT HOLE GALLERYで本作の展覧会が開催されています。ぜひ足を運んでみては?
タイトル | ロニ・ホーン『The Selected Gifts, 1974–2015』 |
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出版社 | Steidl |
価格 | 7,100円+tax |
発行年 | 2016年 |
仕様 | ハードカバー/クロス装丁 |
URL | https://steidl.de/Books/The-Selected-Gifts-1974-2015-0913384648.html?SID=9UlHf2lda6e9 |
フランス出身で現在はロンドンを拠点に活動する写真家・映像作家のゴーティエ・デブロンドは、8年間の歳月をかけて世界的に活躍するアーティストのアトリエを撮り続けてきました。本作には、エド・ルシェ、ウォルフガング・ティルマンス、リチャード・セラ、アニッシュ・カプーア、レイチェル・ホワイトリードといった、総勢70名のアトリエがパノラマで映し出されます。未完成の彫刻で埋められた空間や絵の具の筆が散らばった床、興味深い材料が並ぶ棚…。ドキュメンタリー写真の観点から制作過程の現場に迫ることでそのディテールが際立つ一方で、ひと気のない空間から主人の存在がどことなく感じられるのです。普段は作品の裏側に秘められている、創造が形づくられてきた軌跡を辿っていきます。版元絶版となって久しい本書、少部数ですが再入荷しました。
タイトル | ゴーティエ・デブロンド『Atelier』 |
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出版社 | Steidl |
価格 | 15,200円+tax |
発行年 | 2014年 |
仕様 | ハードカバー/クロス装丁(スリップケース付) |
URL | https://steidl.de/Books/Atelier-1824334143.html |
写真と言葉の組み合わせにより独特の物語世界を構築するアーティスト、ソフィ・カルのパレ・ド・トーキョーで開催された展覧会では、母の死をテーマにした作品を発表しました。母・モニークは、誰かが自分の話をしていることを好ましく感じるような人柄で、かねてより娘の作品に登場しないことにやきもきしていたのだそう。皮肉にも自らの臨終のときに初めて、作品の主題となりました。家族アルバムに収められていた幼少期の作家のポートレイトや直筆の日記といったごく個人的なドキュメントが続き、突如現れるのは母との最後の旅で向かった海の景色。母と娘とがわかちあった思い出やともに過ごした日々、そして互いに抱く想いが痛いほどに伝わってきます。刺繍を施した装丁や、実物の写真プリントを貼り込んだかのように艶やかな図版など、まるでひとつの芸術表現のような美しい一冊。
タイトル | ソフィ・カル『Rachel, Monique…』 |
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出版社 | Éditions Xavier Barral |
価格 | 8,500円+tax |
発行年 | 初版2012年/第2版2017年 |
仕様 | ハードカバー/クロス装丁 |
URL |
POST(limArt Co., ltd)
恵比寿にあるブックショップ。定期的に取り扱っている出版社が変わり、出版社の個性を感じる事の出来るセレクトになっている。また書店だけではなく、トークショーや展覧会なども開催、本の売り場のコーディネートや本のアーカイブ作成も手がけている。
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tel: 03-3713-8670
月曜定休
http://post-books.info/
2021年3月以前の価格表記は税抜き表示のものがあります。予めご了承ください。