2020年に売れた写真集は何だろう?昨年に引き続き今年も、それぞれ売れた写真集ベスト3といまオススメの1冊を4つの書店に聞いてみた。あれもあった、これもあった−−と1年を振り返りながら、来年も新しい写真集にたくさん出会えることに想像をはためかせてみよう。第2弾は日本とアジアの写真作品を世界中の人々へ届けること目的とし、2012年に設立されたオンラインフォトブックコレクション・shashasha。オンラインショップの利用が特に増えた一年となった今年、幅広い作家の作品をオンラインで取り扱うshashashaではどんな写真集が売れたのか見てみよう。
セレクト・文=小林暢弘(shashasha ディレクター)
『光景宛如昨 中国の子供達 II』
約40年前に「中国撮影家協会」の協力のもと中国各地を訪れ約7800点を撮影した秋山亮二が、昨年の『你好小朋友―中国の子供達 復刻版』(2018年/青艸堂)に続き、今年発表したのが本書。前作制作中に数多くの未発表作品の存在が明らかになり、この2冊目の刊行はすぐに決定したそう。旧式の自転車や人民服、ブリキ製の魔法瓶やペンケース、古びた校舎や理髪店がノスタルジーを誘うと同時に、日本の公園でも普段見かけるような子どもたちの屈託のない笑顔やそれを周りで優しく見守る父母の姿を見ていると、変わらないコトの強さに勇気づけられる、そんな魅力を味わっている。秋山の絶妙な構図、写真作品としてのクオリティの高さも十二分に堪能できる1冊。
タイトル | 『光景宛如昨 中国の子供達 II』 |
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出版社 | 青艸堂 |
価格 | 4,200円+tax |
発行年 | 2020年 |
仕様 | ソフトカバー/260mm×250mm/140ページ |
URL |
『プロヴォーク 復刻版 全3巻』
2018年11月に刊行され大きな話題となり、その後は品切れとなっていたが、今年11月に再入荷。すごい勢いで売れ続けている。オリジナルに忠実に復刻しながらも、英語・中国語に翻訳したテキスト入りの冊子を加えた親切な編集方針(価格も買い求めやすい!)によって、『プロヴォーク』とその周辺の活動が時代を経ていま新たに世界中に届いていると、さまざまな国のお客様からの購入履歴を見ながら実に強く感じている。多木浩二(1928-2011)・中平卓馬(1938-2015)・岡田隆彦(1939-1997)・高梨豊・森山大道によって生み出された、写真史に鮮烈に刻まれたこの3冊を復刻した出版社の尽力に、あらためて敬服。
タイトル | 『プロヴォーク 復刻版 全3巻』 |
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出版社 | 二手舎 |
価格 | 8,000円+tax |
発行年 | 2018年 |
仕様 | 【第1号】ソフトカバー/210mm×210 mm/68ページ【第2号】ソフトカバー/242mm×180mm/109ページ【第3号】ソフトカバー/240mm×184mm/110ページ |
URL | https://www.shashasha.co/book/provoke-complete-reprint-of-3-volumes |
森山大道『Farewell Photography』
『Japan, A Photo Theater』、『Light and Shadow』、『A Hunter』に続く、森山大道写真集成シリーズ英語版の第4弾。オリジナル版『写真よさようなら』は1972年に刊行されているが、上述のオリジナル版『プロヴォーク』同様、入手は非常に困難となっている。「初期の名作を初版当時の画像サイズのまま再現し(中略)、写真家自身による当時の回想、撮影にまつわるエピソード、撮影場所など、貴重なコメントを付して、資料的な側面も充実」と出版社が説明するように、山の上ホテルで行われた森山大道と中平卓馬による対談までも英訳(世界初)する徹底ぶり。デザインと印刷も素晴らしく、制作陣のプロフェッショナリズムを随所で感じることができる。『未刊行作品集』(1964-1976年撮影)が刊行予定とのことで、こちらも大変楽しみだ。
タイトル | 森山大道『Farewell Photography』 |
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出版社 | bookshop M、月曜社 |
価格 | 12,000円+tax |
発行年 | 2019年 |
仕様 | ハードカバー/314mm×228mm/280ページ |
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▼いまオススメしたい1冊
『Still Life』
昨年の今頃、この2020年を誰が予想しただろうか。多かれ少なかれ私たちの日常は様相を変え、写真家もこれまでとは異なる環境下・アプローチでの撮影を余儀なくされた。本書に収録されているイメージからは、コロナ禍の世界各地で暮らす13人の写真家それぞれが置かれている物理的・心理的状況が浮かび上がっている。ハーリー・ウィアーはロンドンの自宅で、シャオペン・ユアンは自身の気分をぬいぐるみに置き換え、大野真人は家族との時間から、新たなストーリーを主に屋内でつくりあげている。そこからは、先の見えない不安や息苦しさも伝わってくるが、ロックダウンで(否応なしに)時間が増えた先に生まれた自由なクリエイションがずっと印象に残る1冊。参加作家は、ほかにはシャルル・ネグレ、デイビット・ブランドン・ジーティング、彭可など。
タイトル | 『Still Life』 |
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出版社 | Same Paper |
価格 | 5,250円+tax |
発行年 | 2020年 |
仕様 | ソフトカバー/270mm×210mm/250ページ |
URL |
shashasha
日本とアジアの写真を世界中で閲覧、購入できる機会を広げるプラットフォームの提供を目的としスタートした、オンラインフォトブックコレクション。世界中からセレクトした出版社の写真集をはじめ、約1200タイトルの新刊本、ヴィンテージ写真集、プリントをラインナップし、幅広い作家を取り扱う。
2021年3月以前の価格表記は税抜き表示のものがあります。予めご了承ください。