独自の品揃えを持つ3つの書店に、それぞれの個性が光るテーマでおすすめの写真集を選んでもらった。自宅で過ごす時間が増えたいま、写真集を手に取ってじっくり観てはいかがだろうか？第2弾はファッションブランド「マーク ジェイコブス」による書店、BOOKMARC。ファッションはもちろんのこと、音楽、アート、詩集といった幅広い書籍がセンス良くセレクトされている。さまざまな文化に通じているBOOKMARCのおすすめの写真集とは？オンラインショップはないので、ぜひ店頭に足を運んでみて本に触れてみて欲しい！
セレクト・文＝持田剛（BOOKMARC）
時代と人のエネルギーを体感する写真集
ディアナ・テンプルトン『What she said』
ディアナ・テンプルトンは、アメリカ・カリフォルニアのハフィントンビーチを拠点にする写真家。本書のタイトルはイギリスのバンド、ザ・スミスの同名曲から取られている。現代の少女達のポートレイトに80～90年代のロックバンドのフライヤー、そして10代の頃の作者自身によるリアルな日記を組み合わせて構成。時代を超えて「女性の青春時代」をテーマに、思春期の反抗心やうんざりするような失望への深い共感を表現している。プロスケートボーダーで写真家、美術家のエド・テンプルトンの妻であるディアナは、20年にわたってストリートの若者達のポートレイトやスナップ、特に少女を被写体に撮り続けてきた。2009年のヨーロッパの巡回展でもザ・スミスの楽曲からのタイトル引用があったが、今回の写真集『What she said』のタイトルチョイスを始め、この内容、構成は、写真家ディアナ・テンプルトンの一つの到達点ともいえるでしょう
| タイトル | ディアナ・テンプルトン『What she said』 |
|---|---|
| 出版社 | MACK |
| 価格 | 9,350円 |
| 発行年 | 2021年 |
| 仕様 | ハードカバー／195mm×245mm／168ページ／トートバッグ付録 |
ケン・ラッセル『Teddy Girls』
イギリスのバンド、ザ・フーのロックオペラ「トミー」の映画監督のケン・ラッセルが1955年1月にロンドンで撮影し、同年6月4日の『Picture Post』誌に掲載された女性版テッズのスナップがまとめられた一冊。第二次世界大戦直後、イギリスで流行したサブカルチャーの「テッズ（＝テディーボーイ）」は、エドワード朝の影響を受けた不良少年達のファッションスタイル。リーゼントにズートスーツの男性を連想してしまうが、実はテディーボーイズならぬテディーガールズもいた。ただのグルーピーではない彼女達なりのテッズ解釈はエレガントさも持ち合わせる。まだまだ戦禍の面影を残す廃墟や崩れたレンガの中で撮られている写真は、こういう時代でさえ逞しくファッションで自身を表現することが、若者の反抗心でもあり労働者達の粋な矜持だったことに気づかせてくれる。そしてその矜持は少女だって持っていた事が伝わる貴重な
| タイトル | ケン・ラッセル『Teddy Girls』 |
|---|---|
| 出版社 | Happy Dancer |
| 価格 | 3,960円 |
| 発行年 | 2020年 |
| 仕様 | ソフトカバー |
エド・ヴァン・デルエルスケン『Feest』
『セーヌ左岸の恋』で有名なオランダ人写真家、エド・ヴァン・デルエルスケンの未発表写真集。1960年頃に「feest（饗宴）」をテーマにした写真集が企画されたが、何故か日の目を見ず、作品はそのままエルスケンの本棚に放置、2019年に発見され話題となった。エルスケンが最初に希望した小さな装丁で2021年2月に出版が実現した。バガラ（現コンゴ）を旅した直後に企画していたであろうこの写真集は、二度目の結婚と、二つの雑誌とドイツのテレビ局からの給付金で実現した14カ月に及ぶ妻との世界旅行、そして第2子の誕生という喜ばしい出来事に挟まれて、エルスケンの公私ともに充実した人生への祝福と賛歌を感じる。内向的な『セーヌ左岸の恋』と普遍的な『SWEET LIFE』の間をつなぐ重要な写真集。
| タイトル | エド・ヴァン・デルエルスケン『Feest』 |
|---|---|
| 出版社 | NAi010 |
| 価格 | 4,290円 |
| 発行年 | 2021年 |
| 仕様 | ソフトカバー／175mm×115mm／176ページ |
BOOKMARC
ニューヨーク発ファッションブランド「マーク ジェイコブス」が手がける新感覚ブックストア。 2010年9月にNYのBleecker Streetにオープン。その後2013年10月に東京・原宿にも出店した。アートに関する書籍を中心として取り扱う書店の新規開店が少なくなったいま、実際に本を手に取り、書籍の素晴らしさを再認識し、その場で購入できる場所を提供したいという願いが込められている。芸術、写真、ファッションや音楽、詩集や芸術論に至るまで、さまざまなジャンルの書籍が厳選されている。
〒150-0001
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tel: 03-5412-0351
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不定休
https://www.marcjacobs.jp/bookmarc/
