6 January 2022

川内倫子の日々 vol.12

縁のある土地

6 January 2022

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川内倫子の日々 vol.12「縁のある土地」 | 川内倫子の日々 vol.12

縁のある土地

最近北海道に縁がある。ここ数ヶ月個人的な撮影や依頼の仕事などで何度か訪れたし、新型コロナの状況にもよるが、まだこのあとも続きそうだ。そのように何度も続けて同じ土地へ、短期間に違う用事で行くことが時々ある。ある時期はずっと沖縄に行っていたし、海外だとフランスやイギリス、イタリアにそれぞれ続けて行くこともあった。なぜ全然違う用事や仕事が同じ土地で同時期に重なるのかわからないのだけれど、ただその土地に縁があったのだろう。同じようにある時期を同じ友人と時間を共有することが続くことがある。もちろん会いたいから会っているのだけれど、とくに大きな理由もなく、なんとなく疎遠になっていく友人もいたりするから、これも縁というものだろう。星の動きとして、自分の場合は昨年から友人に恵まれる年回りだったようで、たしかに振り返ると新しい友人ができたり、旧知の友人とも再び親交を温める機会も多かった。

年に数回、定期的に訪れる場所もある。静岡県の長泉町にあるクレマチスの丘には、ヴァンジ彫刻庭園美術館や、伊豆フォトミュージアムがあり、企画展に参加させていただく機会があったりしてたびたび訪れる。つい先日も自分の作品を数点展示していただいていたので、家族で久しぶりに行くことにした。毎回併設されているレストランやカフェで美味しいランチをいただき、常設されているジュリアーノ・ヴァンジの彫刻を眺めつつ、企画展も拝見して、庭をゆっくりと歩く。季節ごとにさまざまな花や植物を見ることができ、美しく人の手で整えられた庭を一周し終わると、夕日に包まれていることに気づく。空を見上げ、この場所でしか見られない夕焼けにいつもしばらく見惚れる。帰り際にミュージアムショップに並んだ可愛い雑貨や本を眺めながら、どれを今日は連れて帰ろうかと悩むのも楽しみの一つだ。いくつか選んで購入して帰るころには、空がオレンジ色から藤色と薄いピンクのグラデーションに変わりつつある。そのさまを車窓から眺めていると富士山が見えてきて、毎回その存在感の強烈さに見入ってしまう。そうして心地よい疲れとともに、ふつふつと英気がみなぎり、エネルギーがチャージされる感覚がやってくるのも毎回のことだ。そのまま自宅まで帰るときもあるが、2年前に亡くなった友人のお墓が近くにあるから、翌朝久しぶりにお墓まいりをしたいという思いもあり、今回は三島駅の近くのホテルで一泊することにした。そこは以前娘が3歳くらいのときにも泊まったことがあるホテルで、その際チェックアウトして帰ろうと車を発進したところ、もういっかいとまる!ホテルがいい~帰りたくない~と大泣きして、高速に入ってからも叫び続け、30分以上泣き止まず、最後は泣き疲れて寝た、、ということがあったので、そのホテルに久しぶりに泊まってみようと思ったのだった。娘は泊まったことをなんとなく覚えていたようで、併設されている大浴場から富士山を眺めて気をよくしていた。風呂からあがってネットで探した駅近くのビストロへ行き、期待以上に料理がどれも美味しかったことと、日中クレマチスの丘で過ごした時間の余韻もあり、その夜はすっかりリラックスした気分になった。

翌朝、近くの花屋でお供え用の花を選んでいると、亡くなった友人を近くに感じた。彼女のために花を選ぶことができるから、お墓まいりもいいなと、ふと思った。その日も前日に続き、澄んだ青空だった。お墓のまえで手を合わせてから空を見ると富士山がきれいに見えた。ちょうど富士山が後ろでお墓を見守っているような配置だった。しばらく交互に眺めながら彼女と過ごした時間を思い出した。

帰り道、夫が娘に「いろいろと楽しかったね、何が一番楽しかった?」と聞くと、「カカとホテルで一緒に寝たこと」というので、そんなことで?毎日一緒に寝てるのに、ホテルがよっぽど好きなのかなと笑ってしまった。自宅に帰りつき、夜布団に入ってから、「きょうも一緒に寝るのに、どうして昨日ホテルで一緒に寝たのが一番楽しいことだったの?」と聞いてみると、「だってカカが楽しそうだったから」と言われてはっとした。昨夜はホテルの部屋に帰ってからテレビをつけたらYoutubeの番組欄のようなものが現れて、そのなかにマイケル・ジャクソンのライブドキュメンタリーがあった。これ見ようよ、とアニメを見たい娘を説得して一緒に見たのだった。夫は大浴場に行ったので、娘とふたりでベッドに横になり、布団にくるまれながら、マイケルかっこいいね、ダンスすごいね!と言いながら見たのだった。まだ5歳の娘とアニメや動物もの以外で一緒に映像を楽しめたことが自分も嬉しかったし、娘にもそれが伝わって楽しかったのだろう。「マイコーかっこよかったね」と半分眠りかけた顔でにこにこした娘を抱きしめながら、普段忙しくてめんどくさそうな顔ばかり見せていてごめんね、と深く反省した。

川内倫子の日々 vol.12

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