この対極にあるのが、パリで最も小さなアートブックストアのひとつである、Section 7 Booksだ。もともとパリ10区のベルヴィル・エリアにあったSection 7 Booksは、2016年初めに、ガラス屋根で覆われたパサージュ・デュ・ポンソー内の小さなスペースに移転した。この独立系書店は、アーティストのアントニア・カラーラ、グラフィック・デザイナーのマルコ・カロッティ、キュレーター兼美術評論家のバンジャマン・トレル、作家・キュレーターのテオ・ロバン・ラングロワによって運営され、それぞれが異なる側面からアートブック出版に携わっている。Section 7の品揃えは、この4人の運営者の多面的な興味を反映し、コンテンポラリーアートはもちろん、文学や詩に関する書籍も扱っている。その中でもアートブックや展覧会のプロセスに関連するセクションが特に面白く、グラフィックデザインやキュレーションの仕事、アートブックについての本などもある。
またSection 7では、新たなインプリントとしてAfter 8 Booksを立ち上げ、アーティストのイブリン・ワンの『Unintended Experience: A Job in Amsterdam in January 2017』を最初に刊行している。
&co 119
もうひとつの新しいスペースは、マレ地区、ヴィエイユ・デュ・タンプル通りを入ったコートヤードにできた写真集専門の&co119。有名なイヴォン・ランバートの書店の向かいに2016年4月にオープンしたこのギャラリー兼書店は、日本の写真集のセレクションが充実している。荒木経惟から鈴木理策まで、ギャラリーのディレクターを務めるノエル・コリンがパリと東京を行き来して集めたさまざまなアーティストの新刊やレアブックが揃う。&co119では多様な展示プログラムも提供しており、ハービー・山口や濱谷浩などの日本人作家や、チャド・ムーアやレオ・ベルンなどの国際的なアーティストなどを取り上げている。
マリアン・グッドマンが運営するアートブックストア
国際的なアートシーンの重鎮であるニューヨークのギャラリスト、マリアン・グッドマンも、2017年1月にヴィエイユ・デュ・タンプル通りにある自身のギャラリーの数軒隣に書店をオープンしている。この店舗は、ジョン・バルデッサリ、リネケ・ダイクストラ、デイビッド・ゴールドブラット、トーマス・シュトゥルート、杉本博司など、同ギャラリーの抱える素晴らしいアーティストたちの書籍やマルチプルに特化しており、小さな展覧会スペースも備えている。
個性豊かなブックストアがオープンし、さまざまな形でアートブックに出会える街。ぜひパリを訪れたら最新のアートブックシーンを堪能してほしい。
2021年3月以前の価格表記は税抜き表示のものがあります。予めご了承ください。