「言葉が見つからないんです。 “光栄”なんてもんじゃない」と話すのは、ニューヨークを拠点に活動する写真家で、第12回フォーム・ポール・ハフ・アワードの受賞者ダニエル・シェア(Daniel Shea)。
受賞のきっかけとなったシリーズ「43-35 10th Street」でシェアは、近年の資本主義とそれが彼の故郷ニューヨークに与えている影響について取り上げている。20カ国100名もの候補者の中から見事選ばれた彼は、このアワードで2万ユーロの賞金と今年秋開催予定のFoam Fotografiemuseumでの個展を約束された。
Lic 20, from the series 43 – 35 10th street, 2017 © Daniel Shea
シェアがさまざまな視覚メディアを駆使し描くのは、ニューヨークの都市開発の複雑さと曖昧さ。彼の近所クイーンズ区のロング・アイランド・シティは元々工業地帯であったが、近年高級化が進み、いまではMoMA PS1や煌びやかな高層建築物が立ち並ぶ。シェアはブラジリアの庁舎の写真と衰弱化するカリフォルニア州の産業都市の写真を並置することで、急速な変貌を遂げるこのエリアから受ける印象を視覚化している。コンクリート、鋼鉄、ガラスの謎めいた世界は事実とフィクションの境界線を崩してゆく。
Untitled, from the series Devils Lake, 2016 © Daniel Shea
また、彼が同時に提出した2016年のプロジェクト「Devil’s Lake」では近年のアメリカ大統領選挙にフォーカスし、「挑発的な選挙サイクル、そしてそれに伴い誇張される白人主義の社会的アイデンティティー」を探求している。
El Coleccionista © Oscar Muñoz
ダニエル・シェア|Daniel Shea
1985年、ワシントンD.C.生まれ。イリノイ大学シカゴ校で美術学修士を取得、卒業後シラキュースのLight Workでレジデントアーティストとして活動を開始。現在コロンビア・カレッジ・シカゴのDigital Artist-In-Residenceプログラムに参加している。2012年に初となる写真集『Blisner, Ill』を出版。2014年にはそれに続く『Blisner, IL』を発表。『43-35 10th Street』はKodoji Pressより今年出版予定。
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