東京・馬喰町のDDD HOTELにて、香りを用いた創作活動をするアーティスト和泉侃による展示「NOISE CANCELLATION」が9月8日まで開催されている。和泉による香りに加え、写真家・中島大輔の作品と伊万里の窯元・畑萬陶苑によるオブジェが並ぶ。見えないものと見えるものが展示される本展について和泉と中島に聞いた。
取材・文=IMA
DDD HOTELに入ると、芳香が漂う。同所はアートギャラリーパーセルを併設しているが本展示はホテルエントランスのギャラリースペースにて行われているのだ。「NOISE CANCELLATION」は香りで都会の喧騒を「ノイズキャンセルする」という身体感覚を企図したインスタレーション。入館すると少し苦みのある香りに意識が向き、フッとフレッシュな気分になる。
「植物の青みを感じる香りが嗅覚に引き起こす反応で、都会のノイズを相殺させる作品です。香り主体の作品ですが、写真を添えることで、作品に対して鑑賞者の解像度が上がると思います。中島さんの写真は、香料と捉えて展示しています。香りは空間やヴィジュアルが先にあって、それに合わせてつくるのが通常なんですが、今回は来場者が先に香りを感じて、中島さんの作品を見て、香りの感じ方が変化することを意図して制作しています」と和泉。
中島は、「香りという目に見えないものに写真作品を添えてみたいと依頼をもらい、写真に写すことができないものを撮りたいと僕は日々制作しているので、共感しました。展示写真は、新しくまとめていた作品の中から植物の写真を提出しています。どんな香りか原料を答え合わせするようなヴィジュアル、ではなく、気配がどこか感じられるカットを提案しました」
中島というとエロティックな男性ヌード作品をイメージするが、今回は植物の写真。木肌や葉など5点が並ぶ。「都心の植物の写真です。それが侃くんの今回のコンセプトとたまたま合っていた。裸を撮る時は写すことをセットアップでコントロールした上で、残された刺激に眼差しを向ける感覚。対して、植物を撮る時は、スナップ的で、形や表層のコントロールできない刺激が写ることから目を逸らさない感覚です。両方を並行することが自分にとって必要だと思っています」(中島)。
企画を相談され写真を提案し、また完成した香りを嗅いで展示作品を調整していったという。
「私も写真を見て、またインストールした展示会場を見て、香りを調整しました。終盤にはほんと写真が香り立つように感じて来たほど、写真を原料として扱っています」と和泉。
香りの詳細について気になるところだが和泉は、「今回の展示において香調はあえて伝えなくて良いと考えています。前知識があると香料を追ってしまう。ただ来訪して、香りを感じて、写真を見て、自由に考えて欲しい。写真のあるなしで香りの感じ方が全く違うと思います、写真は道標になるかもしれません。今後も写真と香りの組み合わせた作品を発表していく予定です」
フレグランスブランド、バイレードはイネス&ヴィノードの写真からインスパイアされた香水を出している。ラニュイ パルファンは香りからイメージされたキャンペーンヴィジュアルで香水を訴求している。嗅覚と視覚は化学反応を起こすのかもしれない。都会にいつつ新鮮な体験をしたい人はぜひDDDホテルに足を運んでみて欲しい。
タイトル | NOISE CANCELLATION |
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会期 | 2024年8月27日(火)~9月8日(日) |
会場 | DDD HOTEL1階(東京都中央区日本橋馬喰町2-2-1) |
休廊日 | 無し |
料金 | 無料 |
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