ブラジル・サンパウロを拠点とするドローイングアーティスト、サンドラ・シントの個展「コズミック・ガーデン」が銀座メゾンエルメス フォーラムで始まった。会場内は宇宙、空を想起させる青のグラデーションと儚いドローイングで彩られている。
青のグラデーションをベースに繊細な線で描かれた風景がたなびく © Nacása & Partners Inc. / Courtesy of Fondation d'entreprise Hermès
青は、朝、夕方、晩をモチーフに徐々に濃度を増していく。最後の空間では、ミッドナイトブルーの帳が落ちる。この日の移ろいの中で描かれるモチーフは風や波、雲など荘厳な自然を感じさせるモチーフだ。
「宙の真っただ中に皆を招きたいという夢があった」とシントは話す。
彼女のクリエイティビティーを構成する要素は、建築との関係性、手法としてのドローイング、人とのつながりの3つだ。会場の銀座メゾンエルメスは建築家レンゾ・ピアノによる名建築。シントの展覧会には格好の場だろう。
メゾンエルメスのファサードを覆うガラスブロックは、光を取り込む。その表面は水面や氷のようでもある。そして美しいアールを描く角。シントはここから扇子をイメージしたという。扇子はしばしば太陽に見立てられるもの。ガラスブロックから差し込む日の光は時とともに移ろい、影は変わりゆく。また、この個展も会期5月10日(日)までで消えゆく。
日本の浮世絵や中国の山水画から影響を受けたという白や銀の細い線から描き出されるシントの作品は、たなびくように繊細で、すべてのものは変わるという諸行無常観も漂っている。
キャンバスからドローイングは描かれた © Nacása & Partners Inc. / Courtesy of Fondation d'entreprise Hermès
ところどころに置かれるキャンバスに注目してほしい。あらかじめブラジルで用意していたもので、それを展示壁に掛け、そこから本展のドローイングを構成していった。波や風などキャンバスが要所要所の起点となっている。
どのドローイングも前述の通り繊細なものだが、シントのほか6人のコラボレーターとともに創り上げたもの。「アートは人と人を繋げる橋渡しができると考えている。今回は6人の協力者と共に制作した。小さな点ひとつひとつも手描き。ともに力を合わせ、平和の世界をつくる、これを願っています」
夜の間は靴を脱いで入る。クッションもあるので、ぜひくつろいで鑑賞したい © Nacása & Partners Inc. / Courtesy of Fondation d'entreprise Hermès
観覧の最後は夜の間で身をゆだねたい。星空模様のカーペットに横たわり、天を見上げよう。そこに映るは宇宙だ。よく見ると無数の星々の中に、光を象徴するシャンデリア、永遠を表す車輪、つながりを示す橋などが描かれている。夜空を見ていると内省の時間がやってくる。どっぷりとシントのファンタジーに浸りたい。
タイトル | 「コズミック・ガーデン」サンドラ・シント展 |
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会期 | 2020年2月11日(火)~5月10日(日) |
会場 | 銀座メゾンエルメス フォーラム(東京都) |
時間 | 11:00~20:00(日曜は19:00まで/入場は閉館30分前まで) |
URL | https://www.hermes.com/jp/ja/story/maison-ginza/forum/200211/ |
2021年3月以前の価格表記は税抜き表示のものがあります。予めご了承ください。