時代の波にあらがうことができず、戦争の陰に隠れてしまっていた作品を紹介「アヴァンガルド勃興　近代日本の前衛写真」展

「アヴァンガルド勃興　近代日本の前衛写真」展が、東京都写真美術館で8月21日（日）まで開催中。

近代日本写真史における前衛写真は、海外から伝わってきたシュルレアリスムや抽象美術の影響を受け、1930年代から1940年代までの間に全国各地のアマチュア団体を中心に勃興した写真の潮流だ。活発に作品が発表された時期が大変短かかったことから、いままで活動内容についての検証があまりなされていなかった。しかし近年、各地の美術館により研究が進み、海外の展覧会でも作品が注目される機会も増えている。

それまでも写真にとって絵画の影響は強いものだったが、前衛写真は画家だけではなく詩人やデザイナーなどが参加し、その活動の幅を広げていた。特に1937年に「海外超現実主義作品展」が開催されたことによって、多くの写真家が触発され新しい表現へ向かい、画家たちは写真を使って、絵画では出来ない表現に挑戦していった。しかし、次第に戦時下体制の強化とともに各地で行われていた活動は収束へと追い込まれていく。

時代の波にあらがうことができずに、戦争の陰に隠れてしまっていた作品を観覧することで、自由に表現できる大切さと、写真で表現できることの幅広さを実感できるだろう。