喜多村みか個展「revenant」が、5月14日(日)までKanzan galleryで開催中。
本展は、初の写真集『Einmal ist Keinmal』(2013)からちょうど10年を経た今年、これまでの10年間を振り返りながら、喜多村が変わらず写真でとらえようとしてきたものをキュレーターとの共同作業において再考し、これからに向けた新たな出発点となるようなものを目指す。個展のタイトル「revenant」は「亡霊」と「回帰するもの」の両方の意味を備えてる。異なる時期に異なる場所で撮影された写真たちは、再解釈され、未発表の作品とともに提示されることで新たな生を獲得する。
喜多村はこれまで、よくわからないもの、理解を超えたもの、予見できない出来事など、いわば「他者」に眼差された瞬間の感覚を頼りに、それがやって来る方向にレンズを向けてきた。喜多村の写真には家族やその日常は写されてはおらず、無限遠の雄大な風景もない。すべてがその中間の、プライベートな距離を超えた、しかし遠くには行かないある帯域において「他者」からの眼差しをとらえている。そのため被写体が統一されているわけでもなければ、絶対的な撮影距離も異なっているが「時間的な距離」は同じだともいえるだろう。加えて、このシリーズがいわゆる「日常写真」と異なるのは、それが「いま・ここ」の記録性を一義的に目指したものではなく、「他者」に対しそれぞれの単独性/特異性を尊重しながらまるで祈るような態度で臨むことにあるだろう。
未来を計画可能なものとして想定し、自分の意志で世界をコントロールできるようなものとしてとらえる風潮の現代だからこそ、いつどこからやってくるかもわからない「他者」に晒され「他者」に対して開かれていることで生き延びようとする作品を、この機会にぜひ会場で観て欲しい。
タイトル | 「revenant」 |
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会期 | 2023年4月21日(金)〜5月14日(日) |
会場 | Kanzan Gallery(東京都) |
時間 | 12:00~19:30(日曜は12:00~17:00) |
休廊日 | 月曜 |
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