31 August 2024

畠山直哉が震災を捉えた「津波の木」展

31 August 2024

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東京・六本木のタカ・イシイギャラリーにて8月31日、畠山直哉の個展「津波の木」が開催される。同所8年ぶりの個展となる本展では、「津波の木」から10点、新作の「Kochi」から30点を展示する。

2018年から撮り続け2024年に写真集として結実した「津波の木」は、太平洋沿岸部に残された、津波の痕跡をとどめる樹木や風景を記録した作品群。東日本大震災から6年が経った2017年、畠山は故郷・陸前高田を流れる気仙川上流の河原で1本のオニグルミの木に出会う。「半分の木」と畠山が呼ぶその木は、左半分に豊かに葉を茂らせながらも、右半分は津波が押し寄せた物体によって幹が傷つけられ、水分や養分が枝へ届かずに枯れていた。同様の木々を探す衝動に駆られた畠山は知人からの協力も得ながら東北地方を巡り、様々な形で震災の影響を受けた樹木に出会うとその姿を大判カメラで記録していく。そこに写し出された「津波の木」たちは、時に不動の存在として崇められ、時に無分別に伐採され利用される、木々と人間の関係性へと私たちの意識を立ち返らせる。そしてまた、自立する木々の周囲には新たに建設された防潮堤や高速道路が垣間見え、経過した時間を描き出すとともに私達が持つ個々の記憶を喚起させる。

本展を構成するもう一つのシリーズとして、2022年に高知県で撮影された「Kochi」より、津波避難タワーを被写体とした作品を新たに発表する。同県の黒潮町では、南海トラフ地震による津波の高さが2011年に東北地方の沿岸地域を壊滅させた大津波の2倍となる30メートルと予想され、県内の各地では津波避難タワーと呼ばれる一時的な避難施設が建設されている。本展における「Kochi」シリーズの類型学的な作品構成は、東日本大震災以降に数々のタワー群が日常の生活環境に組み込まれる様相を浮かび上がらせる。畠山の写真は、それらが犠牲者を限りなく減らすための救済の場として屹立する一方で、その周囲の風景が圧倒的な作用によって失われてしまう時を静かに予告する姿を捉え、自然現象との向き合い方や、そこから発展する科学技術が人の未来を規定しうる可能性について思考を促す。

タイトル
津波の木
会期
2024年8月31日(土)~9月28日(土)
時間
12:00~19:00(最終日は15:00まで)
場所
Taka Ishii Gallery complex665(東京都港区六本木6-5-24 3F)
休廊日

日・月曜日、

料金

無料

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