東京・六本木のギャラリーTARO NASUで11月22日から、アストリッド・クライン個展「j’écrivais des silences des nuits(私は沈黙を、夜を書いた)」が開催される。
1970年代後半のポストモダニズム運動の旗手アストリッド・クライン。映画の文法を引用したモンタージュや見立ての手法を用いて、絵画、コラージュ、写真、インスタレーションにおけるイメージとテキストの関係性を考察する彼女の作品は、その関係性の背後に潜む問題をあらわにすることをも試みる制作姿勢で、近年、新たに注目を浴びている。
「ヌーヴェルヴァーグ」と呼ばれたフランス映画界の新潮流や、それに呼応したフランスのアート界におけるニューウェーブ作品、それらを取り巻き、そこから派生もした当時のポピュラーカルチャーの強い影響は、クラインの作品世界に明確に反映されている。それと同時に、経済と人間の尊厳、生と死、暴力、社会的あるいはジェンダー的役割など、極めて現代的な問題に対して、当時からすでに意識的に取り組んでいたことこそが、彼女の作品に対する近年の再評価の最大の理由であり、彼女の作品にこめられた批評精神はあらためて新鮮な考察の対象となっている。 本展では、彼女の代表的な二つのシリーズより作品9点が展示される。