長野県御代田町の浅間山麓に広がる豊かな自然を背景に、「浅間国際フォトフェスティバル2025 PHOTO MIYOTA」が9月30日まで開催されている。
今年のテーマは「Unseen Worlds まだ見ぬ世界へ」。国内外16組の写真家による約300点の作品と、アマナコレクションから厳選された戦後日本写真約200点が、複合施設MMoP(モップ)を中心に町内各地で展示される。
「Unseen Worlds まだ見ぬ世界へ」というテーマは、カメラが捉える光と影、時間や記憶の痕跡を通じて、目に見えない現象や非物質的な世界を可視化する写真の力を探求する。写真は単なる記録を超え、想像力や精神性を表現し、鑑賞者を新たな視点や対話へと誘うのだ。テクノロジー、自然、社会、個人の内面を多角的に捉えた作品群が、MMoPを回遊性高く覆う。
展示は、国際色豊かな写真家たちの多様なアプローチが際立つ。スティーブン・ギルはレンズに蟻を忍ばせる実験的手法やモーションセンサー付きシャッターを用いて、動物の生態を浮かび上がらせる。小原一真は、チェルノブイリ原発事故の影響をテーマにした「Fragments」(2015-2016)を展示し、歴史と記憶の断片を静かに訴えた。注目しているユニットである日本のTHE COPY TRAVELERSは、日常の物体をコピー機で再構築し、新たな物語性を生み出す。
印象的な今年のキービジュアルの2人も見逃せない。飾ったのはブラジル人写真家ルイーザ・ドアの「Imilla」とオランダ人写真家サンデル・クースの「POST」。ドアの「Imilla」は、ボリビア高地の先住アイマラ女性が伝統衣装「ポジェーラ」を纏い、スケートボードに乗る姿を捉えたシリーズ。かつて差別の対象だった伝統を現代のサブカルチャーと融合させることで、文化的抵抗と新たなアイデンティティを力強く表現している。MMoPではジャングルジムのようなパイプを組んでダイナミックに展示している。
一方、クースの「POST」は、祖父母のアルバムを基にAIで生成した1940~90年代風の「偽の家族写真」を通じて、男性性の時代的構築や記憶の真正性を問いかける。両作品は、地理的・時間的遠隔性を通じて「まだ見ぬ世界」を象徴し、鑑賞者に深い思索を促すものだ。
さらに見逃せないのがアマナコレクションだ。横田大輔、柴田敏雄、畠山直哉など24名の日本人写真家の戦後作品約200点が一堂に会す。歴史的文脈を現代につなぐ重厚な展示で見ごたえたっぷりだ。
軽井沢駅から乗り継ぎ、しなの鉄道で向かう御代田は、喧騒がなくなり静謐な環境となる。この地では作品の感情と知を増幅させる。9月となれば暑さも落ち着いてくる。長野でまだ見ぬ世界に出合ってみてはいかがだろうか。
タイトル | 浅間国際フォトフェスティバル2025 PHOTO MIYOTA |
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場所 | MMoP(長野県北佐久郡御代田町大字馬瀬口1794-1) |
会期 | 8月2日(土)~9月30日(火) |
時間 | 10:00~17:00(屋内展示の最終入場16:30まで) |
休日 | 水曜日 |
料金 | 入場無料、屋内展示1200円(会期中何度でも利用可、中学生以下無料) |
URL | https://asamaphotofes.jp/ |