ホンマタカシが切り取る、日本人のアイデンティティ『PORTRAIT OF J』

ホンマタカシの新作品集『PORTRAIT OF J』の刊行を記念した展覧会「Takashi Homma / PORTRAIT OF J
」がPOSTにて2025年9月28日（日）まで開催中。

ホンマが2002年から現在にかけて撮影した111人の日本人のポートレイトを収録した本作は、今日活躍しているあらゆる世代の幅広い職業や人生経験をとらえている。意図的に選ばれた一般の人々に焦点を当て、都市部を中心にそれぞれの身近な場所で撮影することで、被写体の心理的な深みを露わにするスポットライトのような性質を持ち合わせているこれらの写真群は、ホンマの共感と、操作や演出なしに人々をありのままに観察したいという願望に導かれて制作された。その結果、より包括的でニュアンスに富んだ日本のアイデンティティを切り取った視覚的表現が生まれている。これまで長年、伝統や技術革新によって世界中の人々を魅了してきた日本において、日本人の現実の生活は理想化され、誤解され、見逃されることが多かったが、本書を通じて、現代日本を生きる地に足のついた、ありのままの人々の姿を提示しようとするホンマのまなざしに触れることができる。

また本展は、同作の写真イメージを使用したスライドショーと音楽を合わせたインスタレーションとして構成されている。ホンマが影響を受けてきた建築家の磯崎新や、写真家の中平卓馬などに敬意を表すとともに、アウグスト・ザンダーの『Face of Our Time』（1929年）やアーヴィング・ペンの『Small Trades』（2009年）、ヴォルフガング・ティルマンスの『Portraits』（2002年）などといったポートレイトの代表作と共鳴し、今後も受け継がれていく一冊といえるだろう。