ドイツ・ウェッツラーのエルンスト・ライツ・ミュージアムは6月11日から9月20日まで、写真家ドナータ・ヴェンダースと映画監督・写真家ヴィム・ヴェンダースによる二人展「Two Pairs of Eyes. Photographs by Donata and Wim Wenders」を開催している。
本展は、異なる視点を持つ二人の写真表現を「対話」という形式で紹介するもの。展示では、それぞれの代表作に加え、近年制作された作品群も公開されるほか、本展のために収録されたインタビュー映像も上映される。
ヴィム・ヴェンダースは、『パリ、テキサス』(1984)、『ベルリン・天使の詩』(1987)、『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』(1999)、そして近年の『PERFECT DAYS』(2023)などで知られる現代映画界を代表する映画監督の一人である。彼の作品では常に「場所」が重要な役割を果たしてきた。写真作品においてもその関心は変わらず、旅先や映画撮影地で撮影された風景や建築を主題としている。鮮やかな色彩と明晰な構図によって描かれるイメージには、人の姿がほとんど存在しない。しかしそこには、人々が残した痕跡や生の気配が静かに宿っている。
一方、ドナータ・ヴェンダースの写真は対照的だ。主にモノクロームを用い、人間そのものに焦点を当てる。光と影、シャープネスと身体の動きによって構成されるミニマルな画面には、舞踊家のピナ・バウシュや作家ポール・オースターといった文化人も登場する。さらに長時間露光や多重露光、クロスフェードといった実験的技法を取り入れながら、人物を現実と幻想のあいだに漂う存在として描き出している。
二人の写真表現は大きく異なる。しかし共通しているのは、写真を単なる記録媒体としてではなく、世界を再発見するための装置として捉えている点だ。ヴィムが風景や建築を通して人の存在を示唆するのに対し、ドナータは人物の身体や影を通して内面の物語を浮かび上がらせる。本展は、その異なる二つの眼差しが交差することで、写真における知覚や物語性について改めて考えさせる機会となる。
近年、ヴィム・ヴェンダースは映画監督としてだけでなく写真家としても国際的な評価を高めている。1980年代に『パリ、テキサス』の準備期間中に制作された代表作《Written in the West》をはじめ、その写真作品は映画と並行しながら独自の展開を遂げてきた。今回の展覧会は、その写真表現をドナータの作品と並置することで、夫婦でありながら異なる創作方法を持つ二人の関係性を浮かび上がらせる試みでもある。
