ニック・ナイトといえば、昨年日本での初個展も開催されて、ますます人気が高まるファッションフォトの大御所。1980年代から今日に至るまで、数々のブランドを手がけ、話題をさらってきた巨匠だ。その既成概念を覆すビジュアルイメージは、ファッションの領域を大きく拡大してきた。
今シーズン、英国を代表するラグジュアリーブランド・バーバリーの2019年春夏シーズンのキャンペーンビジュアルは、このニック・ナイトを含む6人のフォトグラファーが撮影するという、なかなか手の込んだものとして発表された。その背景にあるのが、2018年3月にチーフ・クリエイティブ・オフィサーに元ジバンシィデザイナーのリカルド・ティッシの就任だ。今シーズンはティッシのデビューコレクションであり、キャンペーンも彼の初ディレクション。このキャンペーンとともに、本格的に新生バーバリーが始まったことを感じさせる。
テーマは「Kingdom(王国)」。トラディショナル、パンク、ストリートなど英国の様々なファッションカルチャーをティッシ流にバーバリーに落とし込んだが、今季のキャンペーンフォトにその多様性が表現されている。ナイトのほかにはコリン・ドッジソン、ユーゴ・コント、ダンコ・シュタイナー、レティ・シュミッタロウ、ピーター・ランガーらの顔ぶれは、みな『VOGUE』や『Gentlewoman』『iD』といったエッジィなモード雑誌のエディトリアルやブランド広告で活躍するファッションフォト界の俊英たちだ。
6人を起用するという贅沢なキャンペーンでは各写真家のテイストを生かし、ドラマティックなもの、ドリーミーなもの、スティルライフなど様々な手法で今シーズンの世界観を切り取っている。
ナイトのものは彼らしく、複数のモデルたちが強調されるドラマティックな構図。静物を得意とするランガーによる馬頭の彫刻と、影を生かしたドッジソンの椅子に座る女性の対比は、どこか不安と緊張感を感じさせる。コントによる陰影のついたバッグショット、シュタイナーによる光が差し込むバストショットなど、それぞれのフォトテイストと新生バーバリーの多様性がリンクするが、フォトグラファー同様、モデルも世代やカルチャーの異なる人々がキャスティングされている。
英国を代表するメガブランドが広く愛されること表現した6者による叙事詩。バーバリーの懐の深さを感じさせるこのキャンペーンビジュアルからはダイバーシティが叫ばれる「いま」が伝わってくる。
© Courtesy of Burberry
2021年3月以前の価格表記は税抜き表示のものがあります。予めご了承ください。