米国人アーティスト、ザリア・フォーマンが、ラグジュアリーウォッチメゾン「ヴァシュロン・コンスタンタン」のキャンペーン“One of Not Many(少数精鋭の一員)”に起用された。同メゾンのアイコン「オーヴァーシーズ」コレクションを体現する。
変動の時代である現代、社会問題をテーマとするアーティストは多い。フォーマンもその一人だ。地球を旅し、気候変動の影響を記録してきた。南極や北極の極地飛行調査などに参加。また、バンクシ―のディズマランドプロジェクトに、南極大陸でのナショナル ジオグラフィック エクスプローラーに同行するアーティストインレジデンスにも参加している。
彼女は、今世界の課題の一つである気候問題をカメラで収集し、彼女の記憶とともに最終的に紙の上にパステルで再現する。
「芸術には、私たちの感情に訴えかける特別な力を持っています。私は気候変動による破壊の跡ではなく、人々を鼓舞するために、失うことになるものの美しさを作品で表現している。人は何かに惚れこむと、それを守りたくなるのです」とフォーマンは話す。
粉雪の舞う氷河の複雑なディテール、水面に映る氷の青みを帯びた反射光、泡立つ波など、フォーマンは道具を使わず、指先または手の平で顔料をにじませ、柔らかいパステルカラーのペインティングを創る。美しく荘厳な地球を描いた作品は世界中の美術館、ギャラリーに展示されている。
フォーマンはキャンペーン撮影後、オリジナル作品「Fellsfjara, Iceland no.3( フェルスフェアラ、 アイスランド no.3)」をヴァシュロン・コンスタンタンのために制作。アイスランドの氷が変容していく現象に心奪われたフォーマンの連作の3つ目だ。氷のテクスチャーや表面を拡大した新しい技法を用いた作品となった。
彼女は今回のコラボレーションについて次のように語っている。「私自身の仕事においても、時間は重要な要素。氷河が大きくなるための莫大な時間、氷山の端から差しはじめる太陽の光を感じる瞬間、それを写真に収めるための一瞬、作品をすべての細部において完成させるために私が費やす数か月、氷が解けるまでの時間、気候変動の最悪な影響を軽減するために私達に残された時間などです。残された氷河の中に生き続ける歴史のプリズムを通して、私の作品を見る人たちに未来について考えてもらいたいのです。ヴァシュロン・コンスタンタンがメゾンの職人、専門技能、時計製造における偉大な遺産や文化について行っているように、私も美しいモノを守るための一助を担いたいと願っています。私達は共に、創造と保存を行っているのです」
芸術と文化を大切にするヴァシュロン・コンスタンタンは、2018年より同キャンペーンに音楽家のベンジャミン・クレメンタイン、シェイプ クリエーターのオラ・イト、写真家で探検家のコーリー・リチャーズ、オートクチュールデザイナーのイーキン・インらが参加している。今回のフォーマンの起用も同メゾンのフィランソロピーを感じさせる試みだ。