画像の主体としての力を象徴的に返還する、
パトリック・ウォーターハウス『RESTRICTED IMAGES』

イギリス人フォトグラファー、パトリック・ウォーターハウスの作品集『RESTRICTED IMAGES』がSPBH EDITIONSから刊行された。

オーストラリア・ノーザンテリトリーにあるワールクラング・アートセンターで、地元のアボリジニであるワルピリ族のアーティストたちと一緒に制作した膨大な数の作品をまとめた本書。

オーストラリアやヨーロッパの美術館や博物館には、人類学的な価値を持つ何千点もの品々が収蔵されているが、規定のために、こうしたアーカイブのほとんどは非公開になっており、美術館側の肖像権の扱いについても、まだはっきりとした答えは出ていない。

これに対するひとつの回答として作者は、アボリジニの人々との共同作業を通じて彼らに画像の主体としての力を象徴的に返還するという試みを行った。ワルピリ族の人々を数年間かけて撮影し、出来上がった写真を、彼らに伝統的な点描の技法を使って塗りつぶしてもらうことによって、自らの手で写真に規制をかけてもらうことを試みた。そうして、アボリジニの肖像や聖なる場所を撮ったモノクロの記録写真は、カラフルなアクリル絵の具で描かれた手の込んだ美しい模様によって生まれ変わってゆく。

「何を提示し、何を秘密にするかを決めるのは誰か」という力関係を白紙に戻し、再調整する可能性を探求する1冊。