10 April 2020

35年のときを経て発表、
北島敬三写真集『EUROPEAN DIARY 1983-1984』

1983年から84年にかけてヨーロッパで撮影された作品を収録。

10 April 2020

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EUROPEAN DIARY 1983-1984

北島敬三の写真集『EUROPEAN DIARY 1983-1984』は、そのタイトルのとおり1983年から84年にかけてヨーロッパで撮影された作品が収録されており、一部を除きそのほとんどが本書にて初公開となる。

1983年、北島は写真家としてヨーロッパを旅した。その作品をもとに展覧会を行う予定だったが、当時、その写真が日の目を見ることはなかった。これには「人はいつ写真家になるのか」という問いに直接結びついた奇妙な計画が関連している。2019年にロサンゼルスのLITTLE BIG MAN GALLERYで開催された本書と同名の展覧会は、この問いへの答えを示すものである。北島は、35年のときを経て初めてこの土地を撮った写真家となったのである。言い換えると、この写真群が出版するに値する作品となるためには、この35年という時間が必要だったということでもある。この空白の期間が、撮影された当時には存在しなかった「距離」を作り出す。こうしてこのイメージたちは、写真家自身にとってもわれわれ鑑賞者にとっても、等しく遠い存在となる。1983年から84年にかけて、北島は実際にベルリン、ワルシャワ、プラハを訪れているが、いまとなっては当時と現在の間に時間的な距離が存在するがために、北島を含む誰にとっても写真の中の光景に自分の体験を重ねることは不可能となった。あまりに長い時間が経過しているため昨日撮影したばかりだと主張する写真家は存在するはずもない。

北島は、カメラという機械を介した視線と個人の視線とのギャップを獲得するために35年も待ち続けた。その写真家としての道のりは、このギャップとの絶え間ない格闘であったともいえる。北島が発行してきたフォトジン『写真特急便 東京』で発表した、強烈なフラッシュを使用したコントラストの強いスナップショットが代表格でもある初期の作品群は、「見たことがある」「行ったことがある」かどうかばかりに関心を抱き、機械的なまなざしを曖昧にしてしまう鑑賞者の目から逃れることを目的としていた。この戦いの一環として、北島は沖縄とニューヨーク、崩壊直前のソビエト連邦と東ヨーロッパへ訪れている。

タイトル

『EUROPEAN DIARY 1983-1984』

出版社

Little Big Man Books

出版年

2019年

価格

8,200円+tax

仕様

ソフトカバー/174mm×270mm/363ページ

URL

https://twelve-books.com/products/european-diary-1983-1984-by-keizo-kitajima

2021年3月以前の価格表記は税抜き表示のものがあります。予めご了承ください。

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