故郷・東北を写した『いくつもの音のない川』、場所を特定せず雪の景色を収めた『winter』と、藤田はるかは、対象に目を凝らし、対象と自身の距離感を確かめながら、写真というメディアに定着させてきた。
『torikumo』は、襖絵や屏風に描かれてきた花鳥風月を、自身の写真で表現した意欲作となる。画材屋で譲り受けた金箔と銀箔貼りの襖を撮影し、それをプリントした印画紙を下地として、花や木、鳥などの厳しくも美しい自然や動物といった被写体を古い4×5のフィルムで撮影し、その印画紙に重ねてプリントするという手法で制作されている。暗室での手焼き作業によって、濃淡のテクスチャーなど、偶然やその場の発見を取り込みながら一点一点作品を生み出す。出来上がった作品は、襖絵に特徴的な余白(間)を生かした構図で、暗色を基本としながら何層もの色調が重なる様は、はるか長い時間を経て存在する絵画作品のようでもある。
「torikumo」とは季語の「鳥雲に入る」に由来し、春に北方に帰る渡鳥が雲間はるかに見えなくなることを意味する。蛇腹状にページが続く造本も相まって、絵巻物のような写真集となっている。
タイトル | 『torikumo』 |
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出版社 | HeHe |
出版年 | 2022年11月上旬発売予定 |
価格 | 【通常版】6,050円【特装版】27,500円 |
仕様 | 【通常版】蛇腹製本/A5判/72ページ【特装版】限定50部(5種 各edition15)/八つ切(165mm×215mm)プリント付き |
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