Yoshiyuki Okuyama
注目作家の作品を毎日配信!第85弾は奥山由之
「flowers」
亡き祖母が暮らしていた家で長年撮りつづけたシリーズ。ここの場所をいま自身のアトリエとする奥山は、射し込む光に、庭に揺れる草木に、生前の祖母を偲び、多くはなかった会話をあらためて紡ぐように、花を撮り重ねてきた。
1980年代に祖父が使用していた110フィルム(ワンテンフィルム)という小さなフィルムを用いて撮影された花々は、部屋のクラシックな意匠やカーテンとも合わさり、花と向き合う自由な視点や角度に引き付けられる。中でも、窓という絵画的なモチーフを用いて、外部の流動感や瑞々しさと内部のほの暗さを印象づけ、祖母と自身の眼差しを重ね合わせている。キッチンや書斎、寝室など空間を撮った写真は、大判カメラのコンタクトシートや中判カメラ、35ミリ、ポラロイドなどさまざまなカメラを用い、生前の祖母の視点、亡き祖母の漂う視点、そして自身の視点が現れる。窓に映り込む花と、ここにある花。窓を挟む室内の花と、庭の花。花を撮ることによって無数の対話が交わされる。