誰もが応募できるオンラインの写真コンテスト「IMA next」第21弾のテーマ「COVID」のグランプリ受賞者が発表された。
グランプリは、旅・地理写真を起点として活動した後、報道写真へと移行したイタリア人作家のトマソ・アウシリの作品「Holy swabs」。本作はコロナ禍で多くの人々が経験したであろう鼻腔頭検査をドキュメンタリー方式でとらえている。審査員を務めた世界的に活躍するドキュメンタリー写真家であり、写真集のコレクターとしても有名なマーティン・パーは選評として下記のように述べている。
“最近ではCOVID-19に関する写真が後を絶ちません。このコンテストを審査するにおいて、私はいままで見たことのないような写真を生み出すオリジナリティを求めていました。COVID-19を斬新な切り口で表現することは難しかったでしょう!いまとなっては誰しもが鼻腔頭検査を受けたことがあり、その不快感を知っています。そのような中で、フラッシュが焚かれ、綿棒の挿入を覚悟する大きく開いた数々の口には目を引かれました。許可取りと撮影の仕組みだけでも見事です。この作品は、パンデミックのごく当たり前な部分を切り取り、その根幹的な要素に工夫を凝らすことで写真の力を示している優秀な一例です。”
なお、ショートリストにはアシマ・ヤダヴァ、ロドリーゴ・コライチョ、ニール・クレーマーの3名の作品が選ばれた。公式サイトにはショートリストの選評と受賞作品がそれぞれ掲載されている。
タイトル | 「IMA next」THEME #21 “COVID” |
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審査員 | マーティン・パー |
グランプリ | トマソ・アウシリ「Holy swabs」 |
ショートリスト | アシマ・ヤダヴァ「Front Yard」 |
URL |
▼グランプリ
トマソ・アウシリ「Holy swabs」
現在蔓延しているSARS-CoV-2の感染を調べる鼻腔頭検査は手早だが、誰にとっても避けたい体験である。テスト結果やそれが及ぼすであろう影響の心配もこの負担の大きい検査に対する不快感を増す。 綿棒のような細い棒を鼻腔と喉の奥にに差し入れられることで、咳や嘔吐反射も引き起こされることが多いであろう。検査を受ける直前、そのような親密な距離感を赤の他人と共有しなければいけず、逃げ場も選択肢もないこの瞬間に、人間の個性と脆弱性が顕になる。
トマソ・アウシリ|Tommaso Ausili
イタリア人写真家・映像作家。1970年生まれ。大学卒業後に写真に興味を持ち、当初は主に旅行・地理写真家として活動していたが、徐々に報道写真へと移行していった。2009年に始動したプロジェクト「Hidden Death」はWorld Press Photo(3位)とSony World Photography Awardを受賞。2010年以降、Contrasto Agencyに所属。