スイス人写真家、フィリップ・フラニエール写真展「Balancing Act」が、7月30日(金)より神宮前・SAIで開催される。
ロンドンとスイスを拠点にするフラニエール。写真家としてコンセプチュアルなテーマをもって、写真の美しさを多様なアプローチで示す彼の作品群は、 ヨーロッパを中心に現在多くの注目を集めている。その活動は多岐にわたり、作品発表をする傍ら、コマーシャルフォトグラファーとしてHermèsやDior、Cartier、Wallpaper*、Numéroなどへ写真を提供、またスイス・ローザンヌ州立美術学校(ECAL)では講師として、教育の場でも写真表現の確立に努めている。
本展は、フラニエールの二つの代表的な写真シリーズ「Greppon」、「Punctum」の最新作により構成。同名のプロジェクトより作家本人が選び抜き展示される「Greppon」は、過去5年間にスイスのワリスで撮影されたもの。このシリーズは、作家による自然や高山の環境に結びついた神話を探究したいという思いから生まれたもので、高齢化する田舎の山村地帯を見つめると同時に、都会ならではの圧迫された閉塞感から逃れたいという願いも込められている。フィクションとドキュメンタリーの間で揺れ動き、現実を歪めて物を記号化することで神話が形成される方法を反映する「Greppon」。写し出されるイメージは自然環境の美しさをとらえていながらも、個人的な経験に満ちた環境や場所との個人的で、ときには 困難な関係に伴う、実存的な恐怖、時間の重み、死の不安も垣間見させる。
また「Punctum」は、拾った物を使って、謎めいた環境の中で物が無重力状態で浮かんでいるような神秘的なイメージを作り出した、形而上学を探求する実験的なシリーズ。どこにでもあるような物を用いた被写体には記念碑的な意味が込められており、正確な位置に配置したり、慎重に照明を当てたりすることで、 彫刻のような性質を帯び、見る人に被写体に対する新しいイメージを与えてくれる。
このシリーズは、新型コロナウイルスによるロンドンの最初のロックダウン時に、作家自身のスタジオで制作がスタートされた。そんな大きな不確実性による混乱の中、探検、直感、遊びを可能にする避難所であり、創造の場となったスタジオより生まれた本シリーズ。まるで、積み木で遊んだり、さまざまな構図でオブジェクトを配置してストーリーをつくる楽しさの元、シンプルなプロセスで生み出された本シリーズは、彼ならではパンデミックへの対応であり、パンデミック最中だからこそ完成されたもの。また、本シリーズはエディション付ポスター(ED.20)として販売されるほか、シリーズに合わせた ZINE(ED.500)も販売される。
タイトル | 「Balancing Act」 |
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会期 | 2021年7月30日(金)~8月22日(日) |
会場 | SAI(東京都) |
時間 | 11:00~20:00 |
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