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築地:写真において、トポス・場所の問題は重要ですが、「写真像」では消滅してしまう場所を撮っています。写真集や展示では、光の質が変わっていくのを見ていくと面白いと思う。例えば写真集の2番目の写真(写真下)は水滴が写っていますが、その光の反射や、背景に光はどう差すのかとか、自分にとっての光の問題が全部に写っています。風景が変わることや、なくなること、特に光は一瞬でなくなってしまう。そういったことを意識して撮っていました。
Hitoshi Tsukiji "Shashinzo", 1984, gelatin silver print 24.9×24.8cm © Hitoshi Tsukiji
Courtesy of Taka Ishii Gallery Photography / Film
金子:この「写真像」のシリーズにはいろんなものが写っているけれど、結局行き着くところは写真なんですよね。だからこそ「写真像」というタイトルに落とし込まれている。写真の一番プリミティブな、写真が写真であることの意味は、セレクトする上で大きかったですね。写真集の最後の旭橋の写真(写真下)は僕も築地さんも気に入って最後にしようと決めたのですが、印刷のときに、少しだけブレていることに気が付いたんです。ほかは完璧にピントが合っているのに。でも菊地さんが「製版するときに工夫すればちょっと盛り上がって面白いから大丈夫」とうけあって、最後の写真にすることは揺るがなかったんですよね。
Hitoshi Tsukiji "Shashinzo", 1984, gelatin silver print 25×24.9cm © Hitoshi Tsukiji
Courtesy of Taka Ishii Gallery Photography / Film
築地:いいわけだけれど、この写真の左側に小林多喜二の『蟹工船』のモチーフの缶工場があって、地響きがするようなものすごい騒音だったんです(笑)。
金子:久しぶりにこのタカ・イシイギャラリーでの展示構成を見ると、最初の4、5点はいきなりノックアウトするような構成をしたんだなと感じました。そこから各論をやっていって、途中は優しくて普通に写真を見ていくことができるんですが、最後、いままで美味しいと思って食べていたものが全く違うとんでもないもので、とんでもない場所への入り口でしかないんだよ、という感じの終わり方だなと。写真集とは違う形で見ることで流れをすごく感じました。
築地:今回の展示空間は雑なものが全部削ぎ落とされて見えて、この場所でできたことにはとても感謝しています。オリジナルの写真を見られるようになったのはつい最近のことで、写真集で見るのとプリントで見るのとは全く違う。当時は写真というメディアが新しくて新鮮で、金子さんも僕も写真集はものすごく見ていましたが、オリジナルの写真を見ると写り方が違ってまた面白い。写真家ですから見ることに関しては突き詰めなければいけないと思っています。一貫しているのは、情報を撮っているわけではなく、撮ることによって自分が見たことの意味を確かめようとしているんです。
写真展 | |
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会期 | 2017年2月25日(土)~4月1日(土) |
会場 | |
時間 | 11:00~19:00 |
休廊日 | 日月曜・祝祭日 |
URL |
写真集 | 『写真像』 |
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出版社 | CAMERA WORKS |
価格 | 50,000円 + tax |
発行年 | 1984年 |
仕様 | スリップケース入りハードカバー/250mm×250mm/61ページ/500部限定発行 |
URL | https://twelve-books.com/products/shashinzo-by-hitoshi-tsukiji-rare-signed |
築地仁|Hitoshi Tsukiji
1947年神奈川県生まれ。写真を独学で始め、装丁家・菊地信義に写真の表現と思考の方法を学ぶ。1960年代半ばより都市を舞台に、抒情性を排した鋭敏な眼差しで写真表現の本質を探究。主な個展に「方向量」フォト・ギャラリー・プリズム(東京、1976年)、「写真像」ツァイト・フォト・サロン(東京、1984年)、「垂直状の、(領域)」Mole(東京、1992年)、「築地仁の現在<いま・なぜ・ここに> 1974-1998」写大ギャラリー(東京、1998年)など。主なグループ展に「風景の波動」フォト・ギャラリー・プリズム(東京、1977年)、「モノ・カオ・反物語-モダニズム再考」東京都写真美術館(東京、1995年)など。主な写真集に『垂直状の、(領域)』(自費出版、1975年)、『写真像』(CAMERA WORKS刊、1984年)、『築地仁 写真』(日本写真企画刊、2015年)など。主な受賞に日本写真協会新人賞(「写真像」により、1985年)など。作品の主な収蔵先に東京国立近代美術館、東京都写真美術館、川崎市民ミュージアム、国際交流基金、プリンストン大学など。
金子隆一|Ryuichi Kaneko
1948年生まれ。写真評論家、写真史家、写真集コレクター。本業は僧侶。立正大学文学部卒業。元東京都写真美術館学芸員。武蔵野美術大学非常勤講師。日本写真史、特に日本の芸術写真(ピクトリアリスム)を専門とし、東京都写真美術館の企画展はもちろん、国内のさまざまな写真展を企画監修。主な著書として、日本の写真集の黄金時代をアーカイブした『日本写真集史1956-1986』(I.ヴァルタニアンと共著、赤々舎刊、2009年)などがある。
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2021年3月以前の価格表記は税抜き表示のものがあります。予めご了承ください。