奈良原一高の個展「Fashion」が、3月11日(土)まで六本木・amanaTIGPで開催中。
本展では、1960年代に雑誌を主な発表媒体として制作したファッション写真のうち18点が展示される。生前最後の大規模個展となった世田谷美術館「奈良原一高のスペイン――約束の旅」(2019年)にて同ジャンルにおける奈良原の活動が紹介されたことは記憶に新しいが、東京都写真美術館での2004年の回顧展「時空の鏡:シンクロニシティ」以後、同作家によるファッション作品のヴィンテージプリントが展示されるのは19年ぶりとなる。
1962年から3年間、欧州に滞在し制作した作品群をまとめた写真集『ヨーロッパ・静止した時間』、そして帰国後に日本の伝統文化を見つめた「ジャパネスク」シリーズといった代表作が生み出された同時期において、奈良原は雑誌を中心にファッション写真を精力的に発表している。『アサヒカメラ』では1962年に「モード写真の周辺」と題された毎月ひとつのテーマからなる連載に1年間取り組み、そのタイトルが示唆するようにファッション写真への新たなアプローチを提示した。1959年に『装苑』の編集者とアトリエを訪問したことを契機に長きにわたる交友関係を築いた森英恵とは幾多のコラボレーションを行い、富士紡績株式会社のカレンダー作品のほか、1969年には田中一光および成島東一郎と共同で監督を務めたプロモーション・フィルム「ザ・ワールド・オブ・ハナヱ・モリ」を制作。さらに『婦人公論』では、奈良原の写真集も手がけたグラフィックデザイナーの勝井三雄とタッグを組み、画面を上下で二分割した斬新なレイアウトの表紙を1969年から70年の間に発表している。
本展で展示される作品は『婦人画報』や『ハイファッション』といった服飾雑誌のほか、『日本カメラ』など写真専門誌の表紙や誌面を飾ったもの。被写体は森英恵や伊東孝がデザインした衣服が多くを占め、モデルはパリ・コレクションに参加したことでも著名な松本弘子らが務めている。奈良原はかつてファッション写真を「文明批評」と語っているが、流行(モード)を社会に生み出すべく作り上げられたスタイルブックとしてのイメージは、それぞれ時代の絢爛さを瑞々しく刻印している。またその一方で、布地の流動性に呼応するかのように躍動感を伴う実験的な構図や技法が試みられた芸術的表現も見受けられ、ファッション写真に新鮮な眼差しを向ける作家独自の探究心が垣間見える。
タイトル | 「Fashion」 |
---|---|
会期 | 2023年2月10日(金)~3月11日(土) |
会場 | amanaTIGP(東京都) |
時間 | 12:00~19:00 |
定休日 | 日月曜、祝祭日 |
URL |