最近注目を集めるアフリカ系のディアーナ・ローソン(1979年~)は、「画」を創り込んだ6点の厚みのある作品でアフリカ系の人々の生活を見せる。被写体のそばには家族の写真があり、記念品が飾られ、ときに銃がある。銃はギャングの武器でもあり、自己防衛の手段でもある。この空間では、ローソンの写真にベテラン画家ヘンリー・テイラーの具象画を組み合わせて、ステレオタイプな印象を招きそうながらも、アメリカの側面を突きつけてくる。
ディアーナ・ローソンの展示風景
ライル・アシュトン・ハリスの展示風景
ホイットニー・ビエンナーレ史上、1993年の回は非常に政治的だったといわれている。ちょうどアイデンティティ・ポリティックスが隆盛した時期で、人種、ジェンダー、性的指向、エイズ問題などについて、参加した多様なアーティストが主張した。その流れからホイットニーで開催された94年の「Black Male(黒人男性)」展は、黒人男性がアート界でどのように表現されてきたかを検証したエポックメイキングな展覧会となった。このグループ展に大胆なセルフポートレイトが取り上げられたのがライル・アシュトン・ハリス(1965年〜)。活発な動きのあったこの時期に作家の友達やアフリカン・ディアスポラ関係の学者、恋人らと撮ったスナップショット集「エクタクローム・アーカイブ」を懐古の想いを込めた、複数のスクリーンでのスライドショーで展示している。アフリカ系のゲイとしての立場からの新政権の方針への無言の抵抗にも見えてくる。
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