薄井一議による写真集『昭和99年』(6,050円)が禅フォトギャラリーから刊行された。
2011年に薄井が禅フォトギャラリーの個展にて発表した「昭和88年」以降、昭和シリーズとして4作目となる本作。薄井の昭和四部作は、昭和がまだ続いていたらというパラレルリアリティを描く連作で、現代のコンプライアンスによる自主規制からくる善悪の二極化への疑問から始まり、混沌の時代を必死で凌いで行った昭和的生き様への憧れから生まれた作品群だ。
10年以上の歳月をかけて制作されたこのシリーズは、薄井が育った、今は消えつつある昭和の面影を残す場所を舞台にし、決してノスタルジーに偏らず、あたかも昭和が現在まで続いているかのように見る者を錯覚させる。最新作の『昭和99年』はフェデリコ・フェリーニの「甘い生活」からインスピレーションを受けたという。悲喜劇的で幻想的な現実とフィクションが混ざり合う作品に、鑑賞者は写真の隙間に展開する物語を自身の想像で作り上げていくはずだ。
「猥褻と崇高」、「恐怖と滑稽」、「東洋と西洋」、「虚と実」、「生と死」といった、どこか人間の持ち合わせている矛盾、その二元の葛藤が薄井のイメージの中には埋め込まれている。
タイトル | 薄井一議 写真集「昭和99年」 |
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出版社 | 禅フォトギャラリー
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出版年 | 2024年
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価格 | 6,050円(税込) |
仕様 | 257 × 182 mm / 80ページ |
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