26 April 2026

建築は失われたあと、どのように残るのか? アバロス村野敦子展

26 April 2026

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長野・八ヶ岳美術館にて、写真家アバロス村野敦子による展覧会「Side Stories:建築と喪失」と、建築家・村野藤吾に焦点を当てた「森との対話 八ヶ岳美術館の設計プラン」が同時6月28日まで開催されている。

本展の核となるのは、「建築と喪失」というテーマ。アバロスは、阪神・淡路大震災によって倒壊した祖父・村野藤吾の自邸の記憶を起点に、これまで撮影してきた建築写真を再編成してきた。そこでは建築は単なる物理的構造としてではなく、失われた体験や記憶を媒介する存在として立ち現れる。

彼女の写真は、建築を記録するものではない。むしろ、すでに存在しない建物を含め、撮影されたイメージを自身の経験と重ね合わせることで、建築との「対話」として再構築される。写真は客観的な記録から離れ、個人的な記憶と感情を内包したイメージへと転換されるのである。

一方で同時開催される村野藤吾展では、八ヶ岳美術館そのものに焦点が当てられる。設計前のスケッチから施工、そして現在に至るまでの変遷を、模型や図面、写真資料を通じてたどることで、建築が時間の中でどのように変化し、環境と関係を結び続けてきたのかが示される。

特筆すべきは、これら二つの展示が同一空間で交差する点にある。村野が設計した建築の内部で、その孫にあたるアバロスの写真が展示されることで、建築と写真、過去と現在、物質と記憶が重層的に絡み合う。空間そのものが展示の一部として機能し、鑑賞者は建築の内部に身を置きながら、建築の不在について思考することになる。

本展は、建築が失われたあとに何が残るのかという問いを投げかける。それは形としての建築ではなく、記憶や体験としての建築であり、写真はそれらを呼び起こす媒介となる。

タイトル

アバロス村野敦子写真展「Side Stories:建築と喪失」
村野藤吾建築展「森との対話 八ヶ岳美術館の設計プラン」

場所

八ヶ岳美術館(長野県諏訪郡原村17217-1611)

会期

3月28日(土)~6月28日(日)

時間

9:00~17:00(入館16:30まで)

休み

会期中無し

料金

高校生以上510円、小中学生250円

URL

https://yatsubi.com/

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