東京・中目黒のPOETIC SCAPEにて、遠藤文香の個展「Kanoko」が5月16日から開催される。本展は、岡本かの子の小説『鮨』(1939年)に遠藤の写真を組み合わせた書籍『Ayaka Endo: Kanoko』の刊行を記念して企画されたもの。
『Kanoko』は、日本文学と写真を一冊の中で拮抗させるシリーズの第6作にあたる。ここで写真は小説の挿絵として従属するのではなく、文学と並置されながら独自の時間と感覚を生み出している。遠藤の写真は、自然と人為、触れることと介入することの境界を固定せず、むしろそれらが曖昧に揺らぐ瞬間を捉えようとする。
岡本かの子の『鮨』は、感覚や欲望、人間関係の微細な緊張を描いた作品として知られる。遠藤はその世界観に対し、説明的な応答ではなく、気配や余韻として呼応する。植物や身体、光、人工物といったモチーフは、明確な意味へと収束することなく、見る者の感覚に静かに作用する。
遠藤の写真において重要なのは、「介入」の痕跡である。画面には人間の存在が直接写らずとも、触れられた気配や配置された痕跡が残されている。その曖昧な距離感は、自然を客体として切り取る視線から離れ、世界との関係性そのものを問い直すものとなっている。
また、本展の核には“書物”という形式への意識もある。造本家・町口覚との協働によって制作された『Kanoko』は、写真集ではなく、文学と写真が互いを侵食し合う物質的なメディアとして構想されている。ページをめくる行為そのものが、イメージと言葉の往復運動を生み出す。
POETIC SCAPEという空間で展示として再構成されることで、書物の中に閉じ込められていたイメージは、壁面や空間へと拡張される。写真と言葉のあいだに立ち上がる余白は、鑑賞者それぞれの記憶や感覚によって埋められていくだろう。
5月23日16時から遠藤と町口のトークイベントが開催される(1500円、要予約、定員20名)
| タイトル | 遠藤文香 展「Kanoko」 |
|---|---|
| 場所 | POETIC SCAPE(東京都目黒区中目黒4-4-10 1F) |
| 会期 | 5月15日(金)~6月28日(日) |
| 時間 | 13:00~18:00(5月23日は16:00クローズ) |
| 休み | 月・火曜日、祝日 |
| 料金 | 無し |
| URL | https://www.takaishiigallery.com/en/archives/43193/ |
