東京・神宮前のLAG(LIVE ART GALLERY)にて7月3日から日本の女性写真家のパイオニアとして知られる山沢栄子の個展「What I Am Doing」が開催される。本展は、Bunkamuraが渋谷ヒカリエで開催する大規模展「まなざしの奇跡 日本女性写真家の冒険」の連携企画として実施される。
1899年に大阪で生まれた山沢栄子は、日本の女性写真家の草分け的存在だ。1920年代に渡米し、サンフランシスコのカリフォルニア・スクール・オブ・ファインアーツで学んだ後、写真家コンスエロ・カネガの助手として写真技術を習得。帰国後の1931年、大阪に写真スタジオを開設し、ポートレート写真を中心に活動を展開した。
山沢の功績は、女性写真家として職業的な成功を収めたことだけにとどまらない。肖像写真や商業写真の分野で活躍する一方、モダニズム写真や抽象表現への関心を持ち続け、生涯にわたり写真表現の可能性を探究した。その先駆的な実践は近年再評価が進み、日本近代写真史における重要な位置づけが改めて確認されている。
本展で紹介される《What I Am Doing》は、山沢が1980年代の晩年に取り組んだ代表作シリーズ。身近な事物や自身の過去作品、さらには写真機材そのものを被写体としながら、色彩、形態、光と影の関係を実験的に探究した作品群だ。そこには写真を単なる記録媒体として扱うのではなく、写真そのものを思考の対象として捉えるコンセプチュアルな姿勢が表れている。
興味深いのは、このシリーズが80代に入った山沢によって制作された点だろう。長年にわたり培われた技術や経験を土台にしながらも、その作品にはなお未知の表現へ向かおうとする好奇心が宿っている。写真家としてのキャリアの総決算というよりも、むしろ新たな可能性への挑戦として位置づけられる作品群だ。
近年、日本の女性写真家をめぐる国際的な再評価が進むなか、山沢栄子の存在はその源流としてあらためて注目されている。大阪中之島美術館、東京都写真美術館、J・ポール・ゲティ美術館などに作品が収蔵される彼女の仕事は、日本写真史におけるモダニズムと実験精神の重要な証言でもある。
同時期に開催される「まなざしの奇跡 日本女性写真家の冒険」では、石内都、石川真生、川内倫子、志賀理江子、野村佐紀子、米田知子ら、世代を超えた女性写真家たちの作品が一堂に会する。山沢の作品は、その豊かな系譜の出発点の一つとして位置づけられるだろう。
| タイトル | 山沢栄子「What I Am Doing」 |
|---|---|
| 場所 | LAG (LIVE ART GALLERY)(東京都渋谷区神宮前2-4-11 Daiwa神宮前ビル1F) |
| 会期 | 2026年7月3日(金)〜25日(土) |
| 時間 | 13:00〜19:00 |
| 休み | 日・月曜日、祝日 |
| 料金 | 無料 |
| URL |
