写真コンテスト「IMA next」第48弾「Open Call」の受賞者が発表された。
IMAプロジェクトが主宰する「IMA next」は、2019年に発足した誰もが応募できるグローバルなオンライン写真コンテスト。応募の中から優れた作品を選出し、プラットフォームとして新たな才能の発掘を目的としている。
今回は浅間国際フォトフェスティバル2026 PHOTO MIYOTAとコラボレーションし、グランプリ1名、準グランプリ2名、準々グランプリ3名の作品がPHOTO MIYOTAで展示される。
なお、ショートリストには柏田テツヲ、ドゥ・シャンヘン、張承龍ら10組の作品が選ばれた。公式サイトにはショートリストと受賞作品がそれぞれ掲載されている。
▼グランプリ
ショーン・チャム「Eastern Promise」
〈Eastern Promise〉は、植民地時代の写真が東南アジアに暮らす華人(中国系移民)の認識や理解をどのように形づくり、そして現在に至るまでどのような影響を及ぼし続けているのかを考察するシリーズである。本作は、19世紀後半から20世紀初頭にかけて、西洋人写真家が当時の植民地マラヤに暮らす中国系コミュニティを撮影した写真をもとにしている。これらの写真は現在、実物のプリントとともにデジタル化され、ヨーロッパ各地のアーカイブに収蔵されている。
シンガポールは1819年にイギリスの貿易拠点として建設され、1867年にはペナン、マラッカとともにイギリス王室直轄植民地「海峡植民地(Straits Settlements)」の一部となった。その後、20世紀半ばまでイギリスの統治下に置かれていた。この時代、ヨーロッパと植民地との交易や往来が活発になるにつれ、西洋人写真家たちはこの地域を訪れ、写真館を開設した。
歴史を通して、カメラはしばしば暴力の道具として用いられ、抑圧的な物語を再生産することに加担してきた。こうした写真の一部は民族誌的研究を目的として撮影され、ヨーロッパ市場向けの土産物として販売されていた。
これらの歴史的写真を見ていく中で、私はそこに共通するパターンや定型表現があることに気づいた。特定の小道具や衣装、ポーズ、背景によって、東南アジアという土地は文脈づけられ、異国情緒を強調するように演出されていたのである。そこで私は、そうしたステレオタイプや人工的な構築をより明らかにするため、自ら小道具や衣装を制作し、「植民地主義的イメージ」を写真のフレームの外へと拡張した。そしてロンドンの自宅という私的な空間でセルフポートレートを撮影し、それらの歴史的写真を再構成した。
〈Eastern Promise〉は、こうしたイメージがいかに人種的ステレオタイプを強化し、帝国主義的権力を支えてきたのかを問い直すことを目的としている。完成した写真作品は、写真というメディアの人工性を明らかにするとともに、植民地主義が今日まで残している影響を批評的に検証している。
ショーン・チャム|Sean Cham
シンガポール生まれ。写真、パフォーマンス、リサーチを横断するアーティスト。歴史資料をもとに、植民地主義や歴史の見え方を問い直す作品を制作。2026年 Foam Talent選出。現在はロイヤル・カレッジ・オブ・アートで研究指導に携わる。
▼準グランプリ
ペン・イーハン「PICNIC」
〈PICNIC〉は、台湾のレストランでよく見られる大規模な風景壁画を記録したシリーズである。タイトルが示すのは、ある根本的な「ずれ」だ。本来、ピクニックは実際の空や草原のもとで行われるはずだが、ここでは静止した印刷イメージを背景に展開される。それは、手軽にその雰囲気を実現するという合理的な台湾の気質を映し出しているとも言える。
こうした壁画は無作為に選ばれているわけではない。調べていくうちに、多くの店主が壁画を選ぶ際に風水を重視していることがわかった。水は財をもたらし、山は後ろ盾や支えを意味する。私は壁画と食事をする人々の光景を一枚の写真の中に収めることで、その場所が本来存在する場所から切り離され、宙づりになったような感覚を生み出している。
〈PICNIC〉が記録しているのは、写真が撮られた後にその写真に何が起こるのかということ。そこでは、実利的な選択と目に見えない信仰とが、日常の空間のなかで静かに重なり合っている。
ペン・イーハン|Pen Yi-Hang
1992年台湾生まれ。台湾の日常に根づく視覚文化や民間仰をテーマに制作。ジョグジャ・フォトグラフィス・フェスティバル、台湾美術ビエンナール、馬祖ビエンナーレなどで作品を発表し、作品は清里フォトアートミュージアムに収蔵。
スクリット・パットジュンタドゥシット「SOMETHING IN EVERYTHING」
本来、海とは水平線まで広がる広大で何もない空間として思い描かれる。しかし、タイ・ラヨーン県の海には別の光景が広がっている。一本の橋が水平線の彼方まで伸び、その先には巨大な煙突が海の中から立ち上がっているのだ。
工業施設は、利便性を絶えず求める大規模な社会を支えるためのインフラ整備の一部であり、その需要は今後も増え続けるだろう。一方で、工業地帯の周辺環境は、意図的であれ事故であれ、汚染されていく。
〈SOMETHING IN EVERYTHING〉は、ラヨーン県で行った現地調査と実験をもとに制作された作品である。作品はフィルムで撮影し、「フィルムスープ(film soup)」と呼ばれる実験的な手法が用いた。フィルムを浸した液体には、テーサバーン・ムアン・マプタプットにある工場の排水管から採取した水、産業廃棄物火災後のウィン・プロセス社の排水処理池の水、工場から流出した有害廃棄物が埋められたゴム農園の土壌、さらに焼却された化学薬品容器の灰を使用した。
実験の結果、多くのネガフィルムには化学物質による染みが生じ、フィルム表面は浸食された。フィルムロールによっては像がほとんど消え去り、ある場所の断片だけが残ったものもあった。それは場所そのもの以上に汚染の存在を映し出しているようであり、すべてのイメージは、現実には目に見えない何かによって汚染されているような姿を見せている。
スクリット・パットジュンタドゥシット|Sukrit Patjuntadusit aka 64 (SiiXTY-4)
タイ生まれ。ランシット大学デザイン学部写真芸術・コンテンポラリービジュアルメディア学科卒業。タイ国内でファッション、プロダクト、エディトリアルなどの商業撮影を手がける。個人ではニュー・トポグラフィックスの流れをくむ作品を発表。
▼準々グランプリ
田中一泉「We are always here. It is me, we are us. But I am me. ―「小林正子さんの生い立ち日記、村の教師時代」より」
「We are always here. It is me, we are us. But I am me. (私たちはいつもここにいる。それは私であり、私は私たちである。でも、私は私である。)」これを核に、私は地球を「あらゆる存在が変容し、交錯する場」としてとらえ直すシリーズを制作している。本シリーズでは、DNAの塩基配列をコドンに基づき機械語へ変換し、RGBカラーチャートとして視覚化する試みなどと並行して、過去の記録を現代のコードへと再編するプロセスを探究している。
起点は2つの邂逅にある。現在地を中心として地図を縮小した際に抱いた「地球という星の一部である」という実感。そして、100年前の他者の写真に対して覚えた切実な親近感である。無数のノイズの中から像がレンダリングされていくプロセスは、私の意識が「孤立した点」から「地続きの全体」へと輪郭を広げる精神的プロセスと重なる。この繋がりこそが「私」という個の存在を証明する。
(全文はIMA next公式サイトに掲載)
田中一泉|Izumi Tanaka
大阪府生まれ。日本写真映像専門学校教員。アトリエリッケンバッカーでディレクターを務める。近年の展示に2025年Roots展(BLOOM GALLERY)、KG+2025 Atelier Ricken Backerfith exhibitionなど。
ヒョジン・ハン「Wonderful Days」
本プロジェクトは、韓国特有のダンス文化を内包する「コラテック(Collatek)」を2年間にわたり記録した、高齢者たちのポートレイト写真集です。「コラ(Cola)」と「ディスコテック(Discotheque)」の合成語であるコラテックには、週末になると千人規模の高齢者が集います。しかし、韓国社会において高齢者のダンスは依然として「不適切で、みだらな行為」と見なされることが多く、長年通い続ける人々でさえ家族や周囲には秘密にするほど、この場所は閉鎖的で隠された存在となっています。超高齢社会を迎えた今、私はこの場所を単なる娯楽施設としてではなく、踊りと生きることへの欲望が絡み合う、一つの「独立した文化圏」として捉え、その真の姿を記録しました。
ヒョジン・ハン|Hyojin Han
韓国生まれ。弘益大学校大学院写真デザイン専攻在学。2024年山国際写真祭、2025年大田国際写真祭のポートフォリオレビューでグランプリを受賞。2025年には清里フォトアートミュージアム「ヤング・ポートフォリオ」に選出。
ダニエル・エヴェレット「Marker」
〈Marker〉は、進歩が意図せず生み出す美しさや、空間を築き、配置するためのシステムが残していく痕跡に着目したシリーズである。時間の経過とともに、さまざまなシステムは積み重なり、互いに重なり合いながら境界を曖昧にしていく。私は、何かが次々と加えられ、取り除かれていくこの循環に関心を抱いている。何かを整理するということは、それを見えなくすることでもある。だからこそ私は、その過程を経てもなお残り続けるものに惹かれる。
このシリーズは、数年にわたり工事現場で集めた、ペンキが付着した石のコレクションから始まった。これらの石は、作業員が境界を示すためにスプレー塗装を施した際、意図せず塗料がかかり、工事の完了後にはそのまま置き去りにされたものである。開発が進んだあとも残されたこれらの石は、自らを押しのけた空間整理のシステムを象徴する存在となっている。
そこからシリーズは、建設過程で用いられるさまざまな印やマーキング、さらに改変の痕跡や、新たに重ねられていく再編成の痕跡へと広がっていった。
ダニエル・エヴェレット|Daniel Everett
アメリカ生まれ。シカゴ美術館附属美術大学大学院修了。シカゴ建築ビエンナーレやクンストハル・シャルロッテンボーなどで作品を発表。近作の写真集に「Marker』(2021年)、「Vantage Point』(2022年)がある。
| タイトル | |
|---|---|
| 審査員 | IMA編集部 |
| グランプリ | ショーン・チャム「Eastern Promise」 |
| 準グランプリ | ペン・イーハン「PICNIC」 |
| 準々グランプリ | 田中一泉「We are always here. It is me, we are us. But I am me. ―「小林正子さんの生い立ち日記、村の教師時代」より」 |
| ショートリスト | 柏田テツヲ「Reconstructing Landscape」 |
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