佐内正史の初めての写真集『生きている』が復刊を遂げる。本書は1997年4月に刊行されたが、当時、決定的瞬間ではない、私写真でもない、誰も見たことがなかった写真群は大きな反響を呼び、新たな才能を世の中が知るところとなった。その衝撃は次世代の写真家にも影響を与え、新しい写真の潮流を生み、写真史的にもエポックな出来事として記憶されている。その後『生きている』は版を重ねたものの、写真集の本文に使っていた用紙が生産中止となったことで、2007年の重版を最後に今では手に入れられなくなった写真集となっていた。
そんな中、2025年10月に創立30周年を迎えた青幻舎のメモリアルイヤースペシャル企画として、もう手に入らなくなった本の復刊プロジェクトが立ち上がる。読者からのリクエストによって、この『生きている』が晴れて復刊を遂げることとなった。
復刊には、初版『生きている』のブックデザインを手がけた造本家の町口覚氏監修の元、新たな本文用紙選定のための印刷テストを重ね、ようやくオリジナルの代わりとなる用紙に辿り着いたことで進んでいった。印刷は当時の方法に拘り、製版フィルムを使用して版を焼き、油性インクで印刷されている。一方、装丁は表紙のイメージをアップデートし、復刊として生まれ変わった新たな仕上がりとなった。刊行から29年、写真の歴史に新たなページが加わる。
さらに復刊記念として、福岡を皮切りに京都、名古屋、盛岡、広島を巡る刊行記念展や会期中トークイベントの開催も。東京では10月11日、青山ブックセンター本店での佐内と町口によるトークイベントが予定されている。この機会をお見逃しなく。
