Vol.2 パリ同時多発テロ事件以降の世界を視覚化する
KANA KAWANISHI GALLERYでは、吉楽洋平の「Formless」展が開催中。アメリカ、オランダ、トルコ、スロヴェニア……世界各国から集められた新聞の上に、色鮮やかなマーブリングが施された新作が展示されている。パリ同時多発テロ事件が起こった2015年11月、吉楽は自身の写真集『Birds』(IMA Photo books)刊行イベントのために渡仏しており、パリの街で異なる背景を持つ多様な民族が複雑に絡み合う「いま」を体験した。帰国後、9~10世紀に日本と中国で生まれた最古のマーブリング技法「墨流し」がシルクロードを渡り、15世紀にトルコで独自の発展を遂げたエブル技法を1年間かけて習得。それぞれの国の言語と写真で綴られた“真実”を、さまざまな国や文化を超えて進化した技法を使って抽象化することで、パリでの実体験を反映させた、テロ以降の世界を表現しようと試みた。
吉楽によるエブル技法は、色も形も美しい。しかしそれらは混じり合わない世界の人々の象徴でもある。その下に潜む“真実”は、うっすらと認識できるところもあれば、塗りつぶされている部分もあり、すべてを読み解くことはできない。おそらく鑑賞者の背景によっても読み解ける範囲や、解釈の仕方は変わってくるだろう。ブレグジット、トランプ政権の誕生、相次ぐテロ……世界中でグローバリズムの限界が露わとなったいまだからこそ、ぜひ見ておきたい作品だ。また、ギャラリー奥にある小部屋で展示されている代表作「Birds」も、あわせてチェックしてほしい。
また最終日の1月29日(日)18:00より、著書『なぜ今、私たちは未来をこれほど不安に感じるのか?』(ダイヤモンド出版)が大きな話題を集める松村嘉浩氏をゲストに招き、クロージングトークイベント「アートとテロはコインの裏表?」を開催予定。詳細はギャラリー公式サイトへ。
タイトル | 吉楽洋平「Formless」 |
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会期 | 2016年12月17日(土)~2017年1月29日(日) |
会場 | |
時間 | 12:00~19:00 |
休廊日 | 日月曜・祝祭日(最終日のみ日曜開廊) |
URL |
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