30 January 2018

Photobooks of the Month

書店員がピックアップする2017年の売上ベスト写真集【UTRECHT編】

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東京都

30 January 2018

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書店員がピックアップする2017年の売上ベスト写真集【UTRECHT編】 | 川島小鳥『道』

2017年はどんな写真集が売れたのだろうか? 昨年7月から4店舗のおすすめ写真集を毎月紹介しているこのコーナーでは、新年特別号として2017年の売上ベスト3を紹介。昨年の写真集のトレンドが見えるラインナップに注目してみよう。

セレクト・文=黒木晃(UTRECHT)

俳優・太賀を、写真家・川島小鳥が約一年間にわたり東京や沖縄、台湾など、さまざまな場所で写しとった私家版作品集。今年7月には本書の出版に合わせ、ユトレヒトを含む都内3箇所で写真展も開催された。一人の被写体を媒介にしながら、そこにある季節や風景の変化、立ち現れる普遍的な感情までもを切り取る私小説のような語り口は、川島の写真集の魅力そのもの。いわゆるタレントの写真集に求められるような、太賀のファンの期待(?!)にも十分に応えつつ、彼のファンならずとも、自然と惹き込まれてしまう求心力を持った一冊。

タイトル

川島小鳥『道』

出版社

私家版

価格

2,315円+tax

発行年

2017年

仕様

ソフトカバー/210mm×148mm/208ページ

備考

*完売

オランダの作家、シャンタル・レンズによる写真のコラージュ作品集。犬や猫、ハリネズミ、馬、魚などさまざまな動物たちが、なぜか背中にお酒の入ったグラスを乗せている。理不尽な状況にありながら、いたって冷静な動物たちの表情には哀愁すら漂う。タイトルはイギリスのソウル・R&Bシンガー、ビリー・オーシャンのデビュー作から。「You Run Around Town Like a Fool and You Think that it’s Groovy(ふざけた調子で町を駆け抜けて、君はそれがグルーヴィーだと勘違いしてる)」。単なる動物の写真群が、背中にグラスを乗せるというワンアイデアのコラージュによって、何度もページをめくってしまう。一見無意味な行為も、繰り返されることで意味性を帯びていくのかもしれない。

タイトル

シャンタル・レンズ『You Run Around Town Like A Fool And You Think That It’s Groovy』

出版社

PANTOFLE BOOKS

価格

3,500円+tax

発行年

2016年

仕様

ソフトカバー/280mm×200mm/100ページ

URL

http://utrecht.jp/?product=you-run-around-town-like-a-fool-and-you-think-that-its-groovy

十年以上にわたって撮り溜められたという日常のさまざまなシーンをまとめた、写真家・竹之内祐幸の作品集。ボーイフレンドや友人と過ごす何気ないひととき、街や旅先で出会ったカラスやリスなどの動物など、ささやかな風景がゆったりとしたリズムで配置される。本書は、デザイナー・藤田裕美が運営する出版レーベルFUJITAからの第二弾。ミントグリーンの紙にブルーのインクのみで印刷され、印刷がされていない見開きページと写真のページが交互に連なるという実験的な仕様。竹之内がとらえた柔らかな光をそのままに残したいという作り手の思いが、刹那的なイメージの美しさをより際立たせる。

タイトル

竹之内祐幸『Things will get better over time』

出版社

FUJITA

価格

3,000円+tax

発行年

2017年

仕様

ソフトカバー/241mm×180mm/168ページ

URL

http://utrecht.jp/?product=things-will-get-better-over-time

2018年注目のアーティスト

今年注目したいのは、1990年生まれの今福華凜と大谷将弘によって2014年に設立されたファッションレーベル「PUGMENT」(パグメント)の活動。服を燃やした灰を顔料にしたロゴTシャツなど、コンセプチュアルな視点を大胆かつしなやかに落とし込んだ衣服は、COSMIC WONDERや、BLESSなどの系譜に通じる、ファッションを介したアート作品とも見ることができる。彼らの活動の新しさは、SNS普及以降の画像としての写真の用い方、その語り方にある。ネット古着通販の商品画像で、ダメージ部分を示す丸(○)に着目し、実際に購入したその古着の同じ箇所に丸い刺繍を施したり、パリコレクションのショー映像のスクリーンショットから服の要素を抽出し、歪な服を作るなど、ネット上の画像と現象の関係性を再考させるようなものも多い。2017年6月に発表したコレクション「SPRING 2018」では、気に入った衣服をネットで見つけると、画像ソフトなどを用いて自分の顔とコラージュさせるという架空の女性を主人公に制作。ショーの様子をホンマタカシ、三野新が撮影し、一冊のコレクションブックとしてまとめた。また、今年の3月には、ユトレヒトを含む都内3カ所にて、新作コレクションを発表も予定している。 ファッションを軸に写真表現をも拡張する、彼らの次なる創作に期待したい。

タイトル

PUGMENT『PUGMENT SPRING 2018 COLLECTION BOOK』

出版社

PUGMENT

価格

4,000円+tax

発行年

2017年

仕様

ソフトカバー/297mm×210mm/96ページ

URL

http://utrecht.jp/?product=pugment-spring-2018-collection-book

UTRECHT / NOW IDeA
アート・デザイン・ファッションなどの書籍を取り扱う神宮前のブックショップ。
ギャラリーが併設された店内には、普段お目にかかることの出来ない国内外のインディペンデントパブリッシャーやアーティストのZINE、書籍などが多数並ぶ。

〒150-0001
東京都渋谷区神宮前5-36-6 ケーリーマンション2C
tel: 03-6427-4041
12:00~20:00
月曜休み(祝日の場合は翌日)
http://utrecht.jp/

2021年3月以前の価格表記は税抜き表示のものがあります。予めご了承ください。

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