肖像写真が社会的地位や富の象徴から、人間性を写し出すひとつの手段となったいま、「個人」を表現するのはほかの誰でもなく本人であるといえるだろう。
ニューヨーク近代美術館「MoMA」が長年にわたり定期的に開催してきた現代写真の展示シリーズ「New Photography」。今年は「Being」をテーマにアメリカ国内外から17名のアーティストを招き、個人と主観性の概念についての問いを提示する。
アイデンティティを主題とする作家アイーダ・ムルネー(Aïda Muluneh)の作品は世界の注目を集めている。エチオピアに生まれ、中東、ヨーロッパ、そして北アメリカへと移住を繰り返してきた彼女は、鮮明な色使いと超現実的な絵画的手法で、どの国民性や民族性にも帰さない独自のアイデンティティを表現する。
Aïda Muluneh. All in One. 2016. Pigmented inkjet print, 31 1/2 × 31 1/2″ (80 × 80 cm). Courtesy the artist and David Krut Projects. © 2017 Aïda Muluneh
また、「個人と主観性の概念」とはいえ、中には一切人物を含まない作品もある。シリアで生まれ現在パレスチナを拠点に活動するヤザン・カーリル(Yazan Khalili)はこれまで主に、さまざまな土地の風景写真を通してその裏側に潜む歴史的、政治的問題や矛盾点を提示してきた作家だ。そんなカーリルが提示する、従来のポートレイトとは異なる「現代」のポートレイトとは?
Yazan Khalili. Hiding our faces like a dancing wind. 2016 (still). Video (color, no sound), 7 min., 30 sec.. Courtesy the artist and Lawrie Shabibi, Dubai. © 2018 Yazan Khalili
デビューして間もない作家からすでに名の知れた作家まで、出展者のバックグラウンドはさまざまだが、参加者全員にとってこれがMoMAでの初めての展示となる。2015年以来3年ぶりの開催となる「New Photography」で、MoMAが掲げる新しい写真表現をお見逃しなく。
Andrzej Steinbach. Untitled from the series Gesellschaft beginnt mit drei. 2017. Inkjet print, 35 7/16 × 23 5/8" (90 × 60 cm). Courtesy the artist and Galerie Conradi, Hamburg and Brussels. © 2017 Andrzej Steinbach
タイトル | 「Being: New Photography 2018」 |
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会期 | 2018年3月18日(日)~8月19日(日) |
場所 | MoMA(アメリカ) |
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