アートに力を入れる大型書店や個性的なアートブックやZINEを扱うインディペンデントブックショップなど、写真集を扱う4店舗の書店員が毎月おすすめの写真集を3冊ずつピックアップするこのコーナー。7月は夏を感じる、また夏に読みたくなるような、おすすめ写真集を3冊ずつピックアップ。
セレクト・文=番場文章(銀座 蔦屋書店)
女優・アイドル写真集の先駆けとなった傑作。「1970年夏・まりこの日記」と題されたエッセイから始まり、東京・軽井沢・パリを舞台にヌードと街中でのスナップで構成。1970年、当時26~27歳だった女優・加賀まりこを被写体に、同じく20代だった写真家・立木義浩が撮影。とにかく自由で開放的で垣根が無く生意気でプライベートな雰囲気な写真の数々は、二人の関係性がうかがえます。47年前に刊行されたとは思えない、エキセントリックで魅力的なデザインは池田満寿夫によるもので、モダンで奔放な加賀まりこの魅力が全快となっています。若き日の立木義浩自身も写真集に登場し、そのモデルのような男前ぶりについて、いかに写真家・立木義浩がかっこいいのかを記したテキストも面白い。当時、二人は付き合っていたのかもしれません。
タイトル | 立木義浩『PRIVATE 私生活/加賀まりこ写真集』 |
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出版社 | 毎日新聞社 |
価格 | 19,000円+tax(古書価格) |
発行年 | 1971年 |
仕様 | ソフトカバー/258mm×297mm/カラー・モノクロ/日本語 |
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歩くことを通して、自然と人間との関係にひとつの文化として向き合い続けてきた写真家・津田直の最新作。リトアニアで出会った人たちに導かれながら人と人の縁とともに4年にわたり紡いだ物語の舞台は、日本から約8,000km離れているにも関わらず、不思議な懐かしさを覚えます。物語はリトアニアの雪の残る冬から始まり、春から夏への移り変わりとともに太陽が力を強め、森は徐々に緑に包まれていきます。グレーからグリーンにかけての階調が美しい装丁とデザインは、緑柱石の原石のような美しさを秘め、「雷の神様がグレーの重たい空から雷を落として、植物に命が吹き込まれ、動物たちが目を覚まして春が始まる」というリトアニアの春の訪れの神話が見事に体現されています。掲載作品は、大きく息を吸い込み全身で爽やかな風を受け止めなたくなる作品の数々。猛暑が続く真夏に、心地よくなる1冊。
タイトル | 津田直『Elnias Forest エリナスの森』 |
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出版社 | handpicked |
価格 | 5,500円+tax |
発行年 | 2018年5月 |
仕様 | ハードカバー/20mm×297mm/カラー/日本語・英語 |
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プールをモチーフに10年間にわたって撮影された「The Pool」と「Poolscapes」のふたつの作品をまとめたもの。ヨーロッパの都市の中にあるプールとアメリカのプライベートプールのふたつが舞台です。タイルやホースの幾何学な線や建築構造が水面によって抽象化され、深みのある色調は絵画のような印象を与えます。歪んだ人々と風景は美しくも奇妙でいて、水面を異界への入口のような領域ともとらえることができます。
単純に海外の美しいプールを眺める感覚でも楽しめる本書。ヤシの木が反射する爽やかな水色の布張り装丁は、部屋に置いているだけでも気持ち良い気分にひたることが出来そうです。
タイトル | カリーヌ・ラヴェル『Poolscapes』 |
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出版社 | Steidl |
価格 | 6,970円+tax |
発行年 | 2018年6月 |
仕様 | ハードカバー/238mm×305mm/カラー/英語 |
URL |
銀座 蔦屋書店
アートと日本文化の2つのテーマに掲げ今年4月にGINZA SIX6階にオープンした大型書店。 6万冊以上のアートブックが並ぶ書店だけではなくギャラリーやカフェなどを併設し 銀座カルチャーの新たな中心となっている。
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2021年3月以前の価格表記は税抜き表示のものがあります。予めご了承ください。