新型コロナウイルス感染症による外出自粛を、日本より一足早く解禁した韓国。近年、ザハ・ハディド設計の東大門デザインプラザや複合施設Dミュージアム、気鋭のアイウエアブランド・ジェントルモンスターによるミュージアム型ストアなどアート&ファッションに関する注目アドレスが話題を呼んでいるが、4月17日よりファッションシーンを牽引するグッチが、ソウル・大林美術館にてアートエキシビションを開催中だ。
「NO SPACE, JUST A PLACE」と題された展覧会は、ソウルのアートシーンで隆盛を見せる「インディペンデント/オルタナティブスペース」の多様性と、「ETEROTOPIA(エテロトピア、他なる空間の意)」への考察から生まれた。展示される全プロジェクトは、ユートピア的な場としての同スペース、という考えに結びつくという。このコンセプトには、異質なものへの理解、少数派のアイデンティティの探求、クィアーの政治学といったストーリーが息づき、アレッサンドロ・ミケーレ率いる今のグッチのクリエーションと呼応する。
ミケーレとタッグを組み、キュレーターを務めたのはミリアム・ベン・サラ。サラは韓国だけでなく世界中から選んだオリビア・エルランガー、イ・ガンスンといった気鋭のアーティストたちに、近未来や幻想的な神話からインスピレーションを得た没入型インスタレーション作品を依頼。
そして会場には、韓国のBoan 1942、D/P、OFなど10のインディペンデントなアートスペースも参加し、所属アーティストの作品が紹介される。
どれも場所・社会の多様性、アイデンティティやジェンダーなど、ミケーレによるグッチがコレクションを通して提起してきた内容と呼応するように感じる作品だ。
インディペンデント/オルタナティブなスペースは、いつの時代もメインストリームから外れたものだ。商業的ではなく、純粋にアートを表現し、政治的かつ実験的な作品を支えてきた。ソウルでは1990年代後半からこうしたムーブメントが起こり、現地アート界を牽引してきたという。今展で光が当てられるこうしたスペースとタッグを組むのは、ビッグメゾンでありながらも多様性を重視し、サポートするグッチらしい取り組みだろう。
ぜひ現地に足を運びたいところだが、難しい時勢だ。そのため本展ではヴァーチャルビューイングを設けている。
グーグルストリートビューのように、大林美術館の中を移動でき、ポイントをクリックすることで説明が表示される(ただしハングル語)。今後は徐々に移動が盛んになっていくかと思われるが、海外渡航が通常時に戻るのはまだ数カ月以上先のことだろう。ヴァーチャルでも、ぜひミケーレのファッションの領域を超えた先進的な思考を感じてみてはいかがだろうか。
タイトル | 「NO SPACE, JUST A PLACE ETEROTOPIA」 |
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会期 | 2020年4月17日(金)~ 7月12日(日) |
会場 | 大林美術館(韓国) |
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2021年3月以前の価格表記は税抜き表示のものがあります。予めご了承ください。