14 July 2023

小林孝行が選ぶ
若手作家による2020年代のベスト写真集3冊

14 July 2023

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小林孝行が選ぶ若手作家による2020年代のベスト写真集3冊【IMA Vol.39特集】 | 小林孝行が選ぶ、若手作家による2020年代のベスト写真集3冊【IMA Vol.39特集】

世界同時多発的に写真集ブームが起こった2010年代、作り手は増加し、受け手の見る目はどんどん成熟していった。ブームのピーク、そしてコロナ禍を経て、現在の若手作家が生みだす新しい写真集は、どう変化しただろう? 『IMA』vol.39の関連記事第6弾は、写真集のプロフェッショナルたちが2020年以降、35歳以下の作家が出版した写真集を、さまざまなテーマのもと3冊ずつ紹介する「若手作家による2020年代のベスト写真集」の企画から、小林孝行を選者に迎えたセレクトを紹介する。写真表現を独自の方法で追求する、エナジーあふれる作家たちが形にした写真集が集まった。

セレクト=小林孝行(flotsam books店主)

「新しい写真表現はまだ生まれるのか?」

数十年前にいい尽くされたことか知らないけど、ほとんどの表現において思い付くようなことは散々過去に先人たちがやり尽くしていて、なかなか新しい表現って生まれにくいのが現状なんじゃないかと思う。グラフィックデザインだとバウハウス時代にはすでにほぼやり尽くされてたとかなんとか。研究者でもなんでもないから本当かどうか知らないけど、そうであっても全く不思議じゃないなとも思う。今回のセレクトでは新しさというのは一旦置いておいて、私が思う2023年現在のいまっぽさというよりは、面白さといった点で選んでみた。

『The Second Seeing』 Ryu Ika (赤々舎、2021)

内モンゴル出身、現在東京を拠点に活動する写真家、リュウ・イカの最初の写真集『The Second Seeing』。300ページ近いボリュームの本書は、イカのピュアでパワフルな写真の塊といった趣がある。一枚で見る写真の美しさというよりは、何百という写真を一息に浴びるような感覚になる。


『Oxy-Ace&RS6』 Pouria Khojastehpay (550BC、2022)

1993年オランダ生まれのアーティスト、プーリア・コジャステハペイの作品集。オランダとドイツにあるATMを狙った強盗事件を丹念に調べ上げ、ファッションカタログのような冊子にまとめた作品集。重々しくなりがちなテーマを、軽やかにさらりと見せるセンスが光っている。


『Vanishing Point』 濵本奏 (自費出版、2022)

Vanishing Pointとは、(透視画法における)消失点、消点、ものの尽きる最後の一点、限界点といった意味であり、この作品群は某所に密かに飾られている濵本の作品の記録である。デザインを担当したニコラ・ティラバッソが掲載作品に大胆に手を加えており、写真家とデザイナーのコラボ作品ともいえるかもしれない。

小林孝行︱Takayuki Kobayashi
古書店勤務を経て、2010年にオンラインブックショップ flotsam booksを設立。2020年には実店舗も東京・代田橋にオープンした。取り扱い書籍は、写真集を中心に新刊、古書、洋書、和書などさまざまで、不定期に展示やワークショップなども開催している。
https://www.flotsambooks.com/

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