揺るぎない完成されたアメリカの美の概念を構築してきたラルフ・ローレン。デザイナーであるローレン氏のインスピレーションから生まれるクリエイションは、多くの人を魅了してやまない。圧倒的に魅力的な写真で綴られたビジュアルブックはタイトル通り、暮らし方であり生き方の提案でもある。
テキスト=IMA
ここに1冊の重厚な写真集がある。『ラルフ・ローレン:A WAY OF LIVING』。笑顔のラルフ・ローレン本人がドアの前に立つ表紙を開いてページをめくると、そこには胸がときめくような世界が広がっている。彼の「ようこそ、我が家へ」という声が聞こえてくるようだ。
ラルフ・ローレンといえば、「アメリカを代表するデザイナー」という形容詞が冠されるが、アメリカを象徴する、アメリカを体現する、アメリカのよき精神である、と言い換えても、そのすべてがしっくりくる。世界中のどのショップに足を踏み入れても、そこには私たちが想像する「美しいアメリカ」「よきアメリカ」が広がっている。古きよきアメリカをただ再現したわけでも単にプロダクトに置き換えたわけでもなく、そこにあるものはアメリカのもつ精神と神髄を再発見し、クリエイションに昇華させた、先駆的なイノベーションだ。名門出版社リッツォーリ・ニューヨークから出版されたばかりのこの本を読むと、それがよくわかるだろう。
ファッションとライフスタイルを常に融合させたひとつの世界観で表現してきたラルフ・ローレン。中でもホームコレクションは1983年にスタート、今年で40年を迎える。その間に彼がファッションやインテリア、さらには食まで、ライフスタイルのすべてに関わり、提唱してきたものは、どれもこれぞ「スタイル」と呼びたくなるものばかり。
そのアプローチを総覧し、私たちの目の前によみがえらせる初の書籍では、アイコニックなライターズチェアや、メンズシャツから発想されたオックスフォード生地やシックなテーラードスタイルの寝具などのアイテム、マディソンアベニューのフラッグシップショップ、牧場やビーチ、ニューヨーク・マンハッタン、モントークの海辺の家など、プライベートハウスの写真もふんだんに紹介されていて、小説か映画さながらの世界に没入できる。
インテリアの参考にする人、スタイルブックとする人、コーヒーテーブルブックとする人、ひとりのアーティストの生き方として読む人、アメリカの歴史や文化の本とする人、憧れととらえる人……読者によってその受け止め方が多様であることからも、この本の豊かさが推し量れる。そのどれであろうとも通底するのは、温かさと多幸感だ。「ようこそ、我が家へ」——氏が愛するすべての場所やものへの招待状としての1冊だ。
▼書籍情報 | |
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タイトル | 『ラルフ・ローレン:A WAY OF LIVING(ア・ウェイ・オブ・リビング)』 |
価格 | ¥11,000(税込) |
仕様 | ハードカバー/544ページ/リッツォーリ・ニューヨーク刊 |