Photobooks of the Month

書店員がピックアップする春を感じるおすすめ写真集【POST編】

ヘルマン・デ・フリース、スザンヌ・デ・フリース『the meadow』

ヘルマン・デ・フリース、スザンヌ・デ・フリース『the meadow』

アートに力を入れる大型書店や個性的なアートブックやZINEを扱うインディペンデントブックショップなど、写真集を扱う4店舗の書店員が毎月おすすめの写真集を3冊ずつピックアップするこのコーナー。3月は季節が変わり、新生活がスタートする春にぴったりのおすすめ写真集を3冊ずつピックアップ。

セレクト・文=錦多希子(POST)

「春」を連想する写真集


オランダ出身のヘルマン・デ・フリースは、造園土木を学び、農業や植物保護事業に従事したのち、作品制作を始めました。あるがままの自然に敬意を向けるようにして紡がれた作品群は、「自然の代弁者」と認識する彼にだからこそなし得る表現です。彼は1970年代以降に妻のスザンヌとともにドイツ・エッシュナウに移住し、そこで植林をしました。本書には、30年におよぶ年月のなかで季節とともに移ろいゆく美しい情景が展開されています。春夏秋冬が淡々と繰り返されるように見えるけれど、生命が生まれては消え、わずかながらも着実に変化を遂げている。自然の営みに寄り添うように暮らす彼らならではの視点を通じて、新しい季節の訪れを感じてみてほしいです。

タイトル

ヘルマン・デ・フリース、スザンヌ・デ・フリース『the meadow』

出版社

Lecturis

価格

5,800円+tax

発行年

2013年

仕様

ハードカバー/クロス装丁

URL

http://post-books.info/new-arrivals/2015/3/25


アムステルダムを拠点とする写真家のジュディス・ジョッケルによる本作は、彼女がスタジオをシェアしていた親友の死がきっかけとなって生まれたもの。遺品である8×10インチの大判アナログカメラを使って、ジョッケルはスタジオの庭に咲く花を撮影しました。壊れた古いカメラには小さな穴が開いているため、光量の制御ができません。それゆえ、写しだされた世界は、どこか白昼夢のような幻想的な光で満たされています。また本書は、The Best Dutch Book Design 2016に選出されました。イメージが印刷された表紙に白布が覆い被さるようすは、まるで時の経過とともに朧げになりゆく記憶を暗喩しているかのようです。

タイトル

ジュディス・ジョッケル『You Breathe from a Garden in Your Neck』

出版社

Fw:Books

価格

5,600円+tax

発行年

2016年

仕様

ハードカバー/クロス装丁

URL

https://fw-books.nl/product/judith-jockel-you-breathe-from-a-garden-in-your-neck/


2016年に熊本市現代美術館で開催された展覧会にあわせて出版されたカタログ。本展では代表作とともに、熊本で撮影された新作が初公開されました。前作「あめつち」で阿蘇の野焼きを撮影した熊本という土地と、写真家・川内倫子。かねてより縁のある二者をより一層結びつけるのは、そこに住まう人々の記憶でした。熊本市民から思い出のエピソードを集め、そのなかから実際に約40箇所を訪れて撮り下ろした作品群は、「水の都」の名にふさわしい瑞々しい光景となって連なります。誰かにとって思い入れのある場所が、現地へ赴き撮影した作家の記憶の断片ともいえる写真作品にあらわれる。そして、それを観る鑑賞者の心にも刻まれる。他者の記憶と自身の記憶とが連鎖し、そして穏やかに循環していくのです。

タイトル

川内倫子『川が私を受け入れてくれた』

出版社

torch press

価格

2,800円+tax

発行年

2016年

仕様

ハードカバー

URL

http://www.torchpress.net/2016/01/30/theriverembracedme/

POST(limArt Co., ltd)
恵比寿にあるブックショップ。定期的に取り扱っている出版社が変わり、出版社の個性を感じる事の出来るセレクトになっている。また書店だけではなく、トークショーや展覧会なども開催、本の売り場のコーディネートや本のアーカイブ作成も手がけている。

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