東京には、個性的なセレクトが光るブックショップが数多く点在する。その中で、アートに力を入れる大型書店や個性的なアートブックやZINEを扱うインディペンデントブックショップなど、写真集を扱う4店舗の書店員が、毎月おすすめの写真集を3冊ずつピックアップ。
セレクト・文=森屋恵美(Shelfオーナー)
タイトル | ヴィヴィアン・サッセン『Hot Mirror』 |
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出版社 | Prestel |
価格 | 7,650円+tax |
発行年 | 2018年 |
仕様 | プラスチック・ジャケット付きソフトカバー/350mm×250mm/160ページ/English |
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タイトル | リー・ミラー『Lee Miller and Surrealism in Britain』 |
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出版社 | Lund Humphries Publishers Ltd |
価格 | 7,950円+tax |
発行年 | 2018年 |
仕様 | ハードカバー/270mm×230mm/152ページ/English |
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秋の展覧会シーズンに突入しました。イギリス、ウェストヨークシャー地方にあるヘップワース・ウェイクフィールド美術館では、オランダの写真家ヴィヴィアン・サッセンの回顧展が10月の初頭まで開催されています。この美術館は、その名称からも伺えるように世界的にも著名な地元出身の彫刻家バーバラ・ヘプワースの作品をコレクションの中核とする美術館ですが、企画展に関してはより幅広く展開しています。今回は「リー・ミラーとブリテンにおけるシュルレアリスム」展と同時に「ヴィヴィアン・サッセン、ホット・ミラー」展が開催されています。時代は異なりますがともに女性写真家であり、ファッション写真家としてもアーティストとしても評価の高い二人。リー・ミラーがマン・レイのミューズでもあり当時のシュルレアリストらとの交友が深かったのは有名ですが、ヴィヴィアン・サッセンも初期作品に自らシュルレアリスムの影響を認めています。
同時開催されたこのふたつの展覧会にはそれぞれ独立した写真集が出版されました。リー・ミラーは図版と研究エッセイをオーゾドックスに収録したハードカバーの形をとり、ヴィヴィアン・サッセンの方は、紙質や装丁にも工夫を凝らした良い意味で軽やかでユニークな作りになっています。特にヴィヴィアン・サッセンのカタログは、彼女のこれまでの各作品シリーズを概観でき、それぞれに興味深いインタビューやエッセイが別紙で差し込まれ、それでいて重苦しくなく装丁や作りも素敵でとてもおすすめです。
もう1冊、10月下旬までドイツのバーデンバーデンで開催中のジェームズ・タレル展のために作られた美しい本をご紹介します。ジェームズ・タレルは空間と光、そこに人間の知覚が加わることで成立するインスタレーション作品を制作する現代美術家です。そして20年来、そういった彼が作り出す「体験型作品」を一手に撮影してきたのが、ドイツの写真家フロリアン・ホルツェルです。フロリアン・ホルツェルはジェームズ・タレルの作品の大部分を撮影するのみならず、オラファー・エリアソン、ドナルド・ジャッド、イリヤ・カバコフら他の多くの現代美術家や著名建築家の作品を撮影するこの分野の第一人者です。本書に収められた数々のタレルの作品とそれを撮ったホルツェルの写真は圧巻です。印刷もきれいで、さらに色彩溢れる内容を想像させないモノクロームの表紙(ジェームズ・タレルの操縦する飛行機)やマカロン・カラーに染め上げた天地小口など、造本のこだわりも楽しく、持っているのが嬉しくなる1冊です。
タイトル | ジェームズ・タレル『Extraordinary Ideas—Realized』 |
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出版社 | Hatje Cantz Verlag Gmbh & Co Kg |
価格 | 10,640円+tax |
発行年 | 2018年 |
仕様 | ハードカバー/300mm×240mm/200ページ/English |
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Shelf
外苑前にあるブックショップ。写真集を中心とした洋書を専門に取り扱っており、店内には希少な本から絶版書までさまざまなジャンルの写真集が所狭しと並べられている。
〒150-0001
東京都渋谷区神宮前3-7-4
tel / fax: 03-3405-7889
http://www.shelf.ne.jp/
2021年3月以前の価格表記は税抜き表示のものがあります。予めご了承ください。