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書店員がピックアップする2018年の売上ベスト写真集【POST編】

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書店員がピックアップする2018年の売上ベスト写真集【POST編】 | ウィリアム・エグルストン『The Democratic Forest. Selected Works』

ウィリアム・エグルストン『The Democratic Forest. Selected Works』

2018年はどんな写真集が売れたのだろうか? 毎月4店舗のおすすめ写真集を紹介しているこのコーナーでは、年末特別号として2018年の売上ベスト3と、来年注目のアーティストを紹介。今年の写真集のトレンドが見えるラインナップに注目してみよう。

セレクト・文=錦多希子(POST)

「カラー写真の父」と謳われるウィリアム・エグルストンが、1980年代に手がけた叙情詩的なプロジェクトをまとめた1冊は、先立って出版された10冊組のボックスセットに収録された作品から抜粋して編纂されました。タイトルからも察しがつくように、本作は彼自身の民主主義に対するとらえ方の反映であるという見方ができます。

当時はきわめてありふれていたのであろう日常的な光景のはらむ空気感を、自身の感情を介入することなく淡々と、しかしヴィヴィッドな彩りでもって映し出していくおなじみの作風は健在である一方で、どことなく感傷的な空気感が伝わってきます。それはきっと、いよいよ冷戦終結を迎える激動の時代背景がそうさせるのでしょう。仮にこの時代を生き抜いた世代でなかったとしても、充分に感じ得ることができます。

タイトル

ウィリアム・エグルストン『The Democratic Forest. Selected Works』

出版社

Steidl

価格

7,200円+tax

発行年

2016年

仕様

ハードカバー/クロス装丁

URL

https://post-books.shop/items/5b4b01dae8db411020005993


2017年にBunkamura ザ・ミュージアム(東京・渋谷)、2018年には伊丹市立美術館(兵庫)で、ニューヨークを拠点に活動した写真家のソール・ライターの、日本では初となる大規模な回顧展が開催されました。彼のキャリアにおいて初期にあたる1950年代に撮影されたカラー写真の作品群が初めて出版物として世に送り出されたのは2006年のこと。叙情的で説得力のある色彩と、捉えどころがなく、往々にして抽象的なコンポジションによって、同時代の作家とは比べることが出来ない独特の感性が光ります。

この伝説的な写真集はしばらく絶版の状態が続いており、特に東京展の会期中には涙を呑んだ方が多かったようですが、2018年にようやく、待望の第8版が刊行されました。絶妙な色彩とともに、存分に味わってほしいです。

タイトル

ソール・ライター『Early Color』

出版社

Steidl

価格

6,600円+tax

発行年

2006年(初版)/2018年(第8版)

仕様

ハードカバー

URL

https://post-books.shop/items/5b4b01dae8db411020005984


不朽の名作「The Americans」以降のロバート・フランクにおいて、本作はもうひとつの傑作だといっても過言ではないでしょう。新たにシュタイデル版として復刊された本書の制作にあたっては、1972年に邑元社から出版された日本版を基礎として、フランク本人との密な協働のもとで同年にラストラム・プレスから出版されたアメリカ版の初版を参照し、その内容をアップデートしています。

スイスで撮影された初期作。ヨーロッパ各地をまわった旅先で捉えたイメージ。「The Americans」のコンタクトシート。彼の若い家族との親密な写真。フォトコラージュ。映像作品のスチール。1972年までのすべての作品シリーズから選出し、年代順に編成した本作は、もはやフランクの半生を写しだす鏡のよう。彼自身が綴った短いテキストも相まって、密なる叙情詩が繰り広げられます。

タイトル

ロバート・フランク『The Lines of my Hand』

出版社

Steidl

価格

4,800円+tax

発行年

2017年

仕様

オタバインド・ブロシュア(見開きに優れた無線綴じ製本方式のひとつ)

URL

https://post-books.shop/items/5c08ba3d2a2862471bff0f42


2019年注目のアーティスト

男女平等と声高に訴えられるようになって久しく経ち、教育現場や社会構造も徐々に好転しつつあるものの、依然として多くの局面で男性優位の状況は根強く残っています。芸術の領域もそのひとつ。こうした実状に対して鋭い視線を向けたのは、フランス出身の写真家、ヴァンサン・フェラーネでした。彼はパリを拠点とする女性アーティストたちのそれぞれのアトリエを訪れ、その空間、彼女たちが創作に打ち込む姿、そして制作途中の作品に息づく何かが生まれる瞬間をとらえます。ジャンルこそ多岐にわたりますが、いずれもパリの新しいアートシーンをつくる一端を担い、素晴らしい偉業を成し遂げている彼女たちが制作に没頭する姿や、芸術家としての苦悩を味わうようすなど、決して他者には見せない一面を垣間見ていくと、彼女たちが女性であるということは、その他の数多ある要素のひとつにすぎないと思わずにはいられません。

タイトル

ヴァンサン・フェラーネ『Visitor』

出版社

Libraryman

価格

6,200円+tax

発行年

2018年

仕様

ハードカバー

URL

https://post-books.shop/items/5bdead3050bbc371cb000720

POST(limArt Co., ltd)
恵比寿にあるブックショップ。定期的に取り扱っている出版社が変わり、出版社の個性を感じる事の出来るセレクトになっている。また書店だけではなく、トークショーや展覧会なども開催、本の売り場のコーディネートや本のアーカイブ作成も手がけている。

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