意外に思われるかもしれないが、メトリポリタン美術館は全米でも有数の写真コレクションを所有している。複製芸術というくくりで写真部門が版画部門から独立したのは1992年と遅いが、1928年のアルフレッド・スティーグリッツからの寄贈以来、写真収集が本格的に始まった。現在、2万5千枚を所蔵している。
本館2階の一展示室は、その所蔵作品を展示して長期的に見せる場となっている。5月末まで開催されていたグループ展「The Poetics of Place」は、タイトルからも想像できるように、現代アートとしての写真における「場所」の表現を39点で見せる展覧会だ。
展示は、特に60年代後半から70前半ぐらいまでのミニマリズムやコンセプチュアリズム、アースアートから生まれた新しい流れを始まりとしていた。ベッヒャー夫妻、ロバート・スミッソン、ダン・グラハムを筆頭に、ロバート・アダムズ、ルイス・ボールツらの「ニュー・トポグラフィックス」、ウィリアム・エグルストンやジョエル・スターンフェルドらのカラー作品、彼らの影響を受けたと思われるジェームズ・ウェリング、Jan Henleら、そして最後は唯一のスライドプロジェクションとしてネットアートの草分けであるドイツ出身のWolfgang Staehleを展示。日本からは柴田敏雄も一点入っていた。
中でも目を引いたのは、晩年のウォーカー・エヴァンスがカラーポラロイドで撮った風景写真9点を組み合わせたシリーズ「アラバマ」(1973年)だ。アメリカのアート写真の嚆矢ともいえるエヴァンスの写真集『アメリカン・フォトグラフス』(1938年)の被写体だった廃虚への、いわば「カラーによる再訪」だが、時代と手法は違っても作家の乾いた視線が貫かれていた。
地味なグループ展ではあったが、アメリカから見た20世紀後半以降の風景や場所にまつわる写真の変遷を駆け足で学習できる空間だった。
Photos and text by Yuriko Yamaki
タイトル | 「The Poetics of Place: Contemporary Photographs from The Met Collection」 |
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会期 | 2016年12月12日(月)~2017年5月28日(日) |
URL | http://www.metmuseum.org/press/exhibitions/2016/the-poetics-of-place |
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