今年の春で第38回を迎える写真フェア「AIPAD(the Association of International Photography Art Dealers)」は、昨年からパークアベニュー・アーモリーからミッドタウンのハドソン川沿いのPier 94へと移りさらなる躍進が止まらない。世界中から100軒以上のギャラリーが集結し、保守的なコレクターが好む近代写真のみならず、ビデオ作品や現代写真も紹介することで幅広い客層を魅了している。さまざまなトークイベントやサイン会などが連日開かれるほか、写真界への貢献者に授与されるAIPAD Awardの表彰式も毎年話題を呼ぶ。前年の受賞者は、30年間にわたりサンフランシスコ近代美術館写真部門シニアキュレターを務めたサンドラ・フィリップと、ヒューストン美術館写真部門に40年間勤務して独自のコレクションを築き上げたアン・タッカー。一般的なアートフェアがとかく販売に力を入れる傾向にある一方、AIPADはアカデミックな存在である美術館とつながることで、写真の文化的、教育的な価値を強調している。
今年の見所のひとつは、「A Time for Reflection」のテーマのもと、エルトン・ジョンが参加ギャラリーが取り扱う作品を選び、キュレーションを手がける特別展。収益の一部は、エルトン・ジョンが主宰するチャリティ団体「The Sir Elton John Charitable Trust」へ寄付されることが決まっており、慈善事業への関心の高いニューヨーカーたちの注目を集めることだろう。
コンテンツ盛りだくさんのAIPADは、今年からの新たな試みとして毎月配信するウェブメディア「AIPAD Exposure」をスタート。参加ギャラリーや写真家とのつながりを強化し、コレクターの育成を目的としたもので、AIPADに参加するギャラリストのコメントをまとめたビデオや元AIPAD代表のキャサリーヌ・エデルマンのインタビュー、AIPADに出品される写真作品の一部を毎月紹介する「In Focus」などが掲載されている。「AIPAD Exposure」トップページ右上にあるメールのアイコンからメールアドレスなどを登録すれば、ニュースレターの登録ができ、毎月最新情報をゲットすることができる。そのほかにも、Instagram、Twitterなどのソーシャルメディアを駆使した定期的なアップデートは、フェア開催へのカウントダウンを盛り上げる。いまや世界各国で写真フェアが開催されているが、数日間のフェア期間中のみでは、写真およびアート業界とコレクターの親密な関係を十分に築くことには限界がある。このような膠着状態を打破すべくスタートした本サイトは、オンラインの特性をフルに活かし、AIPADの活動を継続的に発信する。
アメリカ近代写真史の父、アルフレッド・スティーグリッツは、291ギャラリーでの展覧会の企画と並行して、雑誌『カメラ・ワーク』(1903~1917)を刊行し、アートとして写真の確立を目指した。それから約100年が経ったいま、AIPADの新たな取り組みが、ニューヨークのマーケットのさらなる躍進に一躍買うことになるのか?その動きに注目したい。
Text: Miwa Susuda
タイトル | 「AIPAD」 |
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会期 | 2018年4月4日(水)~4月8日(日) |
場所 | Pier 94(アメリカ) |
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