「写真界のノーベル賞」といわれるハッセルブラッド国際写真賞。今年この賞を受賞したのはコロンビア人アーティスト、オスカー・ミュノツ(Oscar Muñoz)。アワードセレモニーは今年10月8日にスウェーデンで行われ、翌日9日にはハッセルブラッドセンターで彼の展覧会がスタートする。
Editor Solitario © Oscar Muñoz
ミュノツは「時の経過」とそれに伴う「空間の変貌」また「イメージの壊変」を一貫した主題とし、写真メディアの信用性についての問いを投げかけてきた。彼が創り出すのは、水、炭、ドローイングやプロジェクションを使用し、写真と動画像を融合させたインスタレーション作品。常に変化し続ける偶像は、もろく儚い人間のメタファーとなり、実存的問題を提起する。
Aliento(1995-2002)© Oscar Muñoz
例えば「Aliento」(1995-2002)は一見空白の鏡だが、観客が近づくと死亡記事に使われた人々の顔写真が一時的に表面に浮かび上がる装置だ。また、ビデオインスタレーション「Re/trato」(2004)で映し出されるのは、ミュノツ氏が歩道に水で自画像を描く姿。線は描かれると直ぐに蒸発して消えてゆく。
Re/trato(2004)© Oscar Muñoz
彼の作品は、不安定な現代社会で文化、政治の記録から簡単に消しさられてしまう多くの事実と尊い命を忘れない、という彼の強い意志表明でもあるのだ。
El Coleccionista © Oscar Muñoz
オスカー・ミュノツ|Oscar Muñoz
1951年にコロンビアで生まれ、Escuela de Bellas Artes大学で1970年代にアートを学んだミュノツ。これまでにパリのJeu de Paume 、ニューヨークのMoMA、ロサンゼルスのLACMA、ロンドンのTate Modernなど、ラテンアメリカ、ヨーロッパ、そしてアメリカ各地の主要な美術館で展示を行ってきた。2005年には文化センター兼アーティストレジデンシーLugar a dudas をコロンビアのカリに設立。現在もカリを拠点に活動している。
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