小山泰介は、15年前に初めてデジタルカメラを手にして以来、デジタルイメージそのもの、そしてデジタルイメージが普及している時代に魅了されてきた。デジタル写真による表現の拡張を目指し、単にコンピューターやスマートフォンのスクリーンに写る写真を見せるのではなく、観る者に経験をもたらす実験的な作品を継続して発表している。
小山の最新作を展示する個展「SENSOR_CODE」は、ロンドン南部に位置するペッカム地区でのフォトフェスティバル「Peckam 24」のプログラムのひとつとして、Seen Fifteen Galleryで5月18日(金)からスタート。デジタルセンサーとスキャナーに光を通すことで生み出されたイメージを、大判サイズのインクジェットプリントに引き伸ばし、それらを天井から吊るすことで彫刻的なインスタレーションを展開する。観る者は、まるで迷路の中を歩き回るような感覚でイメージを体感すること可能だ。
「私たちは視覚だけではく、体全体を使ってイメージを体験している」と、小山は語る。彼は、デジタルデバイスを用いることで、写真の新たな表現を模索しており、「写真の限界を越えていきたいと考えています。[…]写真は実際の現象をイメージに定着させ固定化するが、私にとって、それは『一時停止』のようなもの。私は常にその前と後があることを意識している」と続ける。
偶然とエラーを取り入れる小山の作品制作を理解する上で、「変容」という言葉がキーワードとなる。「写真というメディアの持つ曖昧さに惹かれる。そして、イメージによって形成されているといっても過言ではない時代において、その曖昧さこそ、現代社会そのものではないか」。膨大な数のデジタルイメージがあふれる中で、小山は作品を、物理的かつ直接的に経験することのできるインスタレーションに定着させることによって、その重要性から写真を逆説的に解放しているのだ。
「SENSOR_CODE」は、小山の試みを実際に体験することができるチャンス。ぜひ足を運んでみてほしい。
Text: Gemma Padley
タイトル | 「SENSOR_CODE」 |
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会期 | 2018年5月18日(金)~6月17日(日) |
会場 | Seen Fifteen(イギリス) |
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