14 December 2020

ファッションを進化させるPUGMENTの挑戦とFLAT LABOのプリント技術

14 December 2020

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ファッションを進化させるPUGMENTの挑戦とFLAT LABOのプリント技術 | 大谷将弘×小須田翔

ファッションとアートの間を行き来しながら、独自のスタイルで作品制作を続けるファッションレーベルPUGMENT。大谷将弘と今福華凜との二人組のユニットによるジャンルを超越した発信活動は、かなりの異端としてデビューし、どこに向かうのか読めない不確定さを孕んでいるように思われたが、コレクションと展覧会をいくつも重ねる中で、その輪郭がはっきりとしてくるにつれ、極めて2020年代的な存在感をもって注目を集めてきた。『IMA』では、彼らの活動の初期からこれまでを注視してきたが、この秋に発表されたコレクション「Almost Heaven」のショーとそれに付随して開催された同名の展覧会(10月17日〜11月8日、会場:SAI)に注目。FLAT LABOのUVプリントとカットの技術が貢献し、ユニークな大型展示が実現したというが、制作を担当したFLAT LABO小須田翔と大谷の対談で、進化するPUGMENTのプレゼンテーションをサポートした制作の裏側を明らかにする。

文=IMA
写真=清水北斗

―今回は展覧会のインスタレーションのための制作をFLAT LABOに依頼されたわけですが、どういうコンセプトの作品だったのでしょうか

大谷:以前に、子供の頃着ていた洋服を解体してつぎはぎに仕立てたスーツを着て、労働基準法で定められた8時間、公園で考え事をするという作品を制作した時があったんです。その時はスーツって、近代的な場で前進して行くような時に着る服という印象が強かったんです。

―スーツというのは、経済活動の中心にいる人たちが着る戦闘服であり、社会の中に置ける立ち位置を示すユニフォームのような役割を備えてますからね。

大谷:はい、そういうところからスタートしたんですが、当時はちょうど福島の原発の事故が起きた時だったもので、経済を発展させていくことが別の形で問われ直している時期でもあって。その時たまたま公園でスーツを着たサラリーマンの人が座って俯いているのを見て、ある種の違和感を感じたんです。普段、街中ですれ違う戦闘中のスーツ姿の人には何も思わないのに、公園だとかなり印象が違って。

―確かに。


大谷:服はクリーンなのに、急にその人自身の内面が表に現れてきた感じがして。そういう風に状況によって服の見え方が変わるという表現がしたくて、そこから発展したのがこの作品です。僕が多摩センターという、東京の郊外で生まれ育ったこともあって。

―多摩センターも場所として結構色々いわくつきの場所というか、高度経済成長の後、世代交代で空洞化してしまった場所とずっと言われてますよね。

大谷:今回コロナが世界を襲って、僕は今鎌倉に住んでいるんですけど、そこにずっといて親にも会えず、自分の故郷や本当の居場所ってどこだろう? って考えるようになって。多摩センターって特徴的なものがほとんど何もない場所なので、僕の中では故郷と呼ぶのが正しいのかわからなかったんです。でも、じゃあ自分はどうやって形成されてきたんだろうと考え始めると、そもそも故郷とはなんだろう、と。そこで感じたのは、故郷とは「場所」というより、すでに自分からなくなっちゃった、自分が経験した「時間」なんじゃないかと思って。


―なるほど。それで子供の頃の写真を今回ショーのために洋服にプリントし、展示用の作品としても大きくプリントしたわけですか。写真というのは、つまり思い出としての「時間」を凝縮したものですからね。
でも、その写真がところどころ切り抜かれているのは、どうしてなんですか?

大谷:記憶って、ところどころこういう風にまだらになってると思うんです。写真って撮ってもらって一枚として見ると、どうしても被写体として写っている人物に目がいっちゃうんですよね。でも、こうしてところどころ切り抜くだけで勝手にランダムにフレーミングされて、細部に視点が行くという感じが好きなんです。


―切り抜かれたサンプルがパンチングされてまとめられて吊るされた展示になったんですよね。記憶の時間、つまり故郷の集積というわけなんでしょうか。

小須田:これはUVプリントで紙はヴァンヌーボーとか普通の紙です。

―なるほど、でもすごいグロッシーなのはUVだからですか?

小須田:いや、これはL版のいわゆるサービス写真をイメージして、最終的に透明のインクを前面にプリントしました。

大谷:今回は僕自身の子供の頃の写真を発掘して使っているので、その時代のサービス版のプリントを再現した感じになります。

―だからなんですね。すごく懐かしい感じがします。

小須田:そうですね、独特のヌメッとした感じが懐かしいですよね。これはカットされた状態もいいんですが、大きいプリントが全部ヌメッとしている状態は、より面白いです。

―でもよく見たら、表面がインクだからかプチプチっと泡が浮いてますね。

小須田:はい、どうしても多少埃とか気泡が入っちゃうんです。この状態も面白いですよね。

大谷:でも、このツヤは入れてよかったです。

小須田:束になったパターンの型と展示用の大型プリントと、どちらが作品なのかなって思ったのですが、全体のプロセスが作品になっているということですか?

大谷:そうですね、初めはパターン型だけだったのですが、試しにこの前FLAT LABOでプリントもらってこれを見た時に、こっちも何かにしたいと思ってフレーミングしました。

小須田:あ、そうだ。打ち合わせのタイミングでですよね。こっちも使えそうってなったので。


―これは壁に掛けたんですね。

大谷:はい、そしてパターン型はチェーンで天井から吊るします。ダッフルコートのボタンみたいなのでポチッとまとめて。
大谷:洋服は、今回はラックにかけてある感じです。

小須田:昔の写真を洋服に仕立てたものも?

大谷:最初は昔の写真をスーツにしたものだけにしようと思っていたんですが、そこから発展させたオフィスウエアや制作プロセスも同時に見せようと思いました。

小須田:実際にモノになるとまた違う要素が見えますよね。

大谷:ショーはルック数が少ないので、普通のランウェイをやるのではなく、たくさんの椅子を均等に配置して、お客さんにランダムに座ってもらい、モデルさんにも用意しておいた椅子に座って物思いにふけっていてもらって、また一人ずつ出て行く演出にしました。

―ちょっと演劇っぽいですね。
PUGMENTの活動はその時その時のコンセプトでユニークな試みが多いですよね。写真との関わりが深いブランドですから、今後もプリントやメディアのテクノロジーの進化が大きく影響していきますね。これからも新しい挑戦が続くと思いますが、楽しみにしています。


FLAT LABO


PUGMENT
2014 年にスタートした大谷将弘と今福華凜によるファッションレーベル。ファッションとアートの間を行き来しながら、衣服が価値や意味を変容していくプロセスを組み込んだ作品として発表。ショーと展示の形を駆使しながら、コレクションを発表してきた。ファッションの概念を超えたプレゼンテーションで社会や世界と向き合う姿勢には、ファンが多い。

FLAT LABO
株式会社アマナが提供するこだわりのプリントディレクションサービスで、美術館クオリティのプリント出力から各種作品加工、展示プランの企画にいたるまでクライアントの様々なニーズに応える。世界最高品質の大型UVプリンターによるインパクトのある 巨大かつ高精細なアウトプットはアーティストからも高い評価を受け、大きなビジュアルによる空間演出は、 各種イベントや展覧会におけるビジュアル演出から、 日常的なオフィス空間での活用など、その用途は実に多彩。

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