21 January 2021

木村伊兵衛賞の片山真理と横田大輔、話題の二人による豪華合作展が完成!

21 January 2021

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木村伊兵衛賞の片山真理と横田大輔、話題の二人による豪華合作展が完成! | 第45回木村伊兵衛写真賞受賞記念写真 (2020年)

第45回木村伊兵衛写真賞受賞記念写真 (2020年)

昨年4月に開催されるはずだった「第45回木村伊兵衛写真受賞作品展」が、ニコンプラザ東京 THE GALLERYで始まった。コロナ禍、主催であるアサヒカメラの休刊、授賞式は実現できず、またニコンサロンの統廃合があり展示会場の状況も大きく変わるなど、一時は予定が見えないままさまよっていた展示だ。その長い空白期間に、受賞者の片山真理と横田大輔の二人は、キュレーターの西田祥子を加えて構成を練り上げた。二人はそれぞれの受賞作を展示するだけでなく、今回、新たにコラボレーション作品として金屏風を背景に作者たちがたたずむ「記念写真」を制作。完全な「二人展」をスタートさせた。

文/写真=池谷修一

横田大輔(以下、横田):金屏風バックの撮影、楽しかったです。実際、家を出る前はナイーヴでしたけど(笑)。

片山真理(以下、片山):え、本当に?

横田:服装が大丈夫かなとか、自分が写るのは苦手だなとかそういう意味ですよ(笑)。でも、片山さんに声を掛けてもらって本当によかったです。

片山:私も実はナイーヴでしたよ(笑)。横田さんは写るのは苦手そうだし。今回は二人展ですから、キュレーションはすごく考えましたね。私はみんなでワイワイやるのは苦手で、横田さんもそうであろうと(笑)。

横田:確かにそうですね。これはユーモアがある行為ですよね。

片山:二人で金屏風の前で撮りたいねって。それはすごく意味があるし、大事なことだと思いました。このご時世で、大規模なことはしばらくできなくなる。その間に私たち自身で模索しいろんなチャレンジをしなきゃいけなくなっていると。私たちが賞に選ばれた意味って何だろうと考え、今回の撮影を思い立ったんです。しかも連名で作品ができてよかった。

横田:すごくいい機会だと思います。

片山:二人の写真に対する態度のようなものにどこか近いものがあると感じていて。また人の作品にもなることに対して、改めて考えたいタイミングだったんです。

第45回木村伊兵衛写真賞受賞記念写真 (2020年)

第45回木村伊兵衛写真賞受賞記念写真 (2020年)


―他者が自分を撮影することをどうとらえるか、ということですか?

片山:ええ、セルフポートレイトを撮るときは自分でシャッターを押すのがモットーだし、ルールだったんです(今回の合作は宇田川直寛が撮影)。私が作ったオブジェであっても、撮った人の写真になってしまうから。ただやはりひとりだけでやるには限界を感じていて、特にこの一年はそれを痛感しました。展覧会の規模、作風もリンクする。またチームで作品をつくり始めた年でもあるし、二人での作品を撮った場に集まった人たちが10年後、20年後にどうなっているか。その最初のきっかけになったらいいなって。

横田:僕はその物語に自分がお邪魔させてもらった感じかな。そういう事故にはなかなか巻き込まれないじゃないですか。

―横田さんは写真の枠を壊し続けていますね。自分で作り解体していく、その往復ですが、巻き込まれつつ崩し、作るということもするんですね。

横田:そうですね、人が干渉し合うって意外と難しいですよね。今回は片山さんから連絡をもらったとき、流されてみようと思ったんです(笑)。


写真家として、次の世代に残していく思い

―コロナ禍にもなり、写真やアートを取り巻く状況も翻弄されていますね。2020年度の木村伊兵衛写真賞は、選考を次年度に送ることにもなりました。そして今回の展示は昨年の春に行われるはずでした。いま率直にどう思いますか?

片山:私は写真の業界にずっとコンプレックスを持っていました。なんというんですかね、「作法」があるみたいな感じというか?わたしは写真にもカメラにも詳しくないし。だから自分なりに勉強して撮っていくことを決めたんですよ。

片山真理


―これは写真とは違う、だとかやはり美術の範疇だとか。そういう狭い見方はありますよね。また性差への認識も依然として。

片山:木村伊兵衛写真賞の審査員には石内都さんがいらっしゃいますが、彼女が私ぐらいの年齢のときは、いまよりずっと生きにくかっただろうと思います。それだけ闘ってきて、だから地盤があり、そこにいま立たせてもらっている。ここで何ができるかなと。お返しは絶対できないと思うので、次の世代に私も残していけたらという思いがすごくあります。

横田:僕の場合は、ここ数年、自発的に活動しようというテンションが低かったので、今回の状況は案外自分には悪くなかったんです。だから受賞はタイミングがよかったとも感じます。歴史や権威がある賞ですが、前は「柄じゃないなあ」と思っていたし、プラス、拗ねていたんでしょうね(笑)。二人展の開催がイレギュラーであるのもある意味貴重だし、個人的にいま開催になったのは嬉しいですね。

横田大輔


―賞によって評価が大きく変わるといわれたりしますが、作家の営みの意味はそもそも別のところにありますよね。アートに順位はないわけで。

片山:もし昨年の春に展示できていたら、全然違った内容になりましたね。二人の展示の相性はいいはずと思ったんです。でもそれには時間がかかるし、ちゃんと対話しなきゃいけないと思っていたので。結果としていろんなタイミングがよくなった。ここまで向かい合って考えられたから。

「写真」を意識しながら

―展示構成について教えていただけますか。

横田:自分は「Sediment」(2019年)のシリーズから3点、「Room」(2019年)から2点選んでいて、これは受賞作を紹介するという意識で選んでいます。木村伊兵衛写真賞の対象となった、ガーディアン・ガーデンでの展示内容とは違って、シンプルに額装し、全体で一つのインスタレーションとして組むことはしていません。片山さんとの作品の関わりでの構成です。加えて、空間の真ん中に「Matter」(2016年)というロール紙にプリントしダメージを与えて積み重ねた作品を置いています。

Matter, 2016


―「Matter」を、あえて加えたのは?

横田:実際に自分の手作業だとか物質的な部分にフォーカスしたシリーズを会場に置くことで伝わりやすくなるのかなと。「Sediment」と「Matter」を中心にして「Room」は補足的に。モニターだとかガジェット的なものは使わず、写真を見せるということでは割とシンプルではあります。

Untitled from the series Room, 2019

Untitled from the series Room, 2019

Untitled from the series Sediment, 2019

Untitled from the series Sediment, 2019


片山:私も「写真の展覧会」という気持ちはありますね。なので写真、インスタレーション、オブジェという構成はしていません。写真があってその中にいろんなものが写っている。またペインティングを写真に撮り、それを布にプリントして、それを背景にした作品があります。その布自体に少し手を入れて一緒に展示しています。「cannot turn the clock back – surface」(2019年)、「shell」(2016年)、「beast」(2016年)というシリーズですね。

横田:自分はいまでも「Sediment」のような作業をずっとやっているんです。家の中に記録用のカメラを3台ぐらい配置して、天井からも俯瞰できる中で作業風景をずっと記録している。僕はたぶんそっちの方が大事なんです。作品をつくるための作業は完成があるからそこで終わってしまう。作業を継続していくための作品づくり。いかにストップさせないようにしていくか。終わらせないこと、変化させ続けていくこと自体に多分重要性を見ているんじゃないのかなと。

cannot turn the clock back – surface #001, 2019 ©Mari Katayama. Courtesy of Akio Nagasawa Gallery

beast, 2016 ©Mari Katayama. Courtesy of Akio Nagasawa Gallery

―変化そのものの定着が作品づくりのコアにあるんですね。

横田:複写して、現像して、読み込んで……とやっていたときは、もともとデジタルで撮っていた画像をPhotoshopで改変し複写して読み込み、時間が経ったらまたそれを見返して、いじって複写して読み込む……そういう更新をし続けないと、自分が変化した現状の印象のようなものが反映されないわけじゃないですか。過去の自分が接触したときの結果は残っているけれど、現在見返したときにはズレがある。そうしたら、そのズレをまた現在に修正していくことをやっていたので。多分そういうことの地続きかな。まだやれる部分がある、ということですね。


アーティストとしていかに生きるのか

―その地続きは、作業の痕跡の拡張みたいなものですかね。

横田:僕はたぶん理想的な像を求めるタイプではないですね。こねくり回しているときが大事だから、その断片、それぞれの過程で、「Sediment」なり「Matter」が排出されてくればいいというか。いや、ずっと未練がましく生き続けるタイプですよね。そして実際ウンザリしてますよ。でもウンザリしながらやるのが好きなんですよ、きっと(笑)。

木村伊兵衛賞の片山真理と横田大輔、話題の二人による豪華な合作が完成!

―それでいうと、片山さんはウンザリはしていない?

片山:嫌だけど続けなきゃと思うことって人生と近いじゃないですか。ネガティブな意味ではなくて、作家ってどんなタイミングかはわからないけれど、一度くらいはもう終わりにしようと考えたことがあると思う。でも大人になるとそうしてはいけないとわかるじゃないですか。終わりにしちゃいけない、次に続く作品を「完成」させなきゃいけないと思ってた。実をいうと3年ぐらいお裁縫をやめていたんです。2017年ぐらいにやりきった感じがしていてオブジェを意識的に作らないでいた。ちょうど娘が生まれたこともあるし、ビーズや針を口に入れてしまわないように片付けて引っ越してスタジオを設けたんです。裁縫の箱を開けたのはほんとつい最近。それまでは、「制作イコール人生」に近いところがあって、生きる事に関しても、制作するに関しても、嫌だ嫌だと思いながら続けていたところがありました。で、オブジェを作ることもスッパリ諦めたところがありました。だから「いつ辞めてもいい浅はかさ」を持てるようになったんです。

―軽やかになったんですかね?

片山:そう「(保育園の)お迎えだからやめるか」みたいな。家族でありながらコントロールできない状況にいまはあって、それに作品も生活も寄り添っていこうと。意識が変わって生きるのも作るのもすごくラクになりましたね。

木村伊兵衛賞の片山真理と横田大輔、話題の二人による豪華な合作が完成!


―なるほど、二人の話を聞いていて思ったことがあって、もし自分の署名をしないで何かを作っていたらということです。裏腹な気持ちをそのまま内包できるのかもしれないから。

横田:わかります。「Spew」(写真家の北川浩司、宇田川直寛とともに組んだユニット)はいい意味でラクでした。作品に署名性がないからわかりづらく、ただの実験的な行為としか見られない。ゆえにポジティブに遊べた。でもそれを一生続けていくのは無理だし、自覚的に遊んでいるわけだからいまは終わったわけですが。そういう無責任さをうまく個人でも入れ込んで行かないと。

片山:それでいうと、私は「Spew」を見ていたから、今回の記念写真に乗ってくれるだろうと、心の中では思っていた!でもだから、横田さんは後ろを向くかな(笑)と思ったし。ああやって仲良くやれる人なら大丈夫かなって。その無責任さは楽しいからいいんだけれど。アーティストは誤解され烙印を押されても無責任さを備えていかないと生き続けられないと思ったんです。失敗しちゃダメみたいな話があるじゃないですか、作品と展覧会で一回でも失敗したら、みたいな。そこで横田さんも道づれにしてやろうと(笑)。

横田:ぜんぜんオーケーですよ(笑)。

片山:私、最初横田さんを知った頃、彫刻家かと思ったんですよ。オランダのUNSEENで2016年かな?これは写真なの?彫刻なの?って。私自身もセルフポートレーターとはいわれたくなくて、オブジェが作品だから、ソフトな彫刻の作家だと。手芸だから工芸とはいわれたくないし、だから美術家ですっていっていた。で、重い責任と無責任をこれから一緒に担うわけですが、これもあり?それもあり?まあ、ないけどあり!だよね、って(笑)。

横田:いいですよね、デタラメな人間が賞をもらえたことはよかったなと思っていますよ。いやいや、自分のことですが(笑)。

―すぐれたアーティストは皆、マジメでありデタラメであるという話も浮上して来るようですね。ありがとうございました。

▼東京
タイトル

「第45回木村伊兵衛写真受賞作品展」

会期

2021年1月19日(火)~2月1日(月)

会場

ニコンプラザ東京 THE GALLERY(東京都)

時間

10:30~17:30(最終日は15:00まで)*緊急事態宣言発令に伴い時短営業

休館日

日曜

URL

https://www.nikon-image.com/activity/exhibition/thegallery/events/2021/20210119_shinjuku2.html

▼大阪
タイトル

「第45回木村伊兵衛写真受賞作品展」

会期

2021年2月25日(木)~3月10日(水)

会場

ニコンプラザ大阪 THE GALLERY(大阪府)

時間

10:30~17:30(最終日は15:00まで)*緊急事態宣言発令に伴い時短営業

休館日

日曜

URL

https://www.nikon-image.com/activity/exhibition/thegallery/events/2021/20210119_shinjuku2.html

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